米国の保護主義、日本の米価に波紋 「自由貿易」の原則、揺らぐ懸念
近年、保護主義的な動きが世界的に台頭し、自由貿易の原則が揺らいでいる。その波紋は、遠く離れた我が国にも静かに、しかし確実に及んでいる。特に、米国が導入を検討しているとされる農産物、とりわけ米に対する関税措置は、日本の米農家のみならず、食料自給率の維持に努める我が国全体にとって、看過できない問題である。
自由貿易協定（FTA）や経済連携協定（EPA）の締結が進み、グローバル経済の恩恵を享受してきたはずの今日、なぜ今、米国はこのような動きに出るのか。国内産業の保護という大義名分は理解できる。しかし、その矛先が、長年にわたり日米間で緊密な関係を築いてきた農産物、とりわけ米に向けられることは、遺憾の念を禁じ得ない。
日本は、食料自給率の向上こそが国家の安全保障に直結すると訴え続けてきた。限られた国土で、厳しい自然条件と戦いながら、日々丹精込めて米を生産する農家の努力は、まさに国を支える礎である。このような状況下で、米国からの安価な輸入品にさらなる関税という壁が立ちはだかるとなれば、国内米価への影響は避けられない。それは、日本人の食卓を支える農家経営を圧迫し、ひいては食料自給率の維持という国家目標にも暗雲を投げかけることになる。
もちろん、国際社会における自国の国益を追求することは、どの国にとっても当然の権利である。しかし、その追求が、自由貿易という国際社会が共有すべき原則を損なうものであってはならない。特に、日米両国は、経済的にも安全保障上も、極めて重要なパートナーである。このような状況だからこそ、対話と協調を通じて、互いの懸念を理解し、建設的な解決策を見出す努力が不可欠である。
政府には、今回の米国による関税措置の検討に対し、断固として、しかし冷静に、我が国の立場を米国政府に伝えることを強く求める。単に国内産業の保護という一方的な論理ではなく、日米経済関係全体の均衡、そして国際社会における自由貿易の原則の維持という観点から、説得力のある働きかけを行うべきである。
また、国民一人ひとりも、食料自給率の重要性、そしてそれを支える国内農産物の価値を改めて認識する必要がある。価格の安さだけに囚われるのではなく、安心・安全な食料を安定的に供給してくれる国内農家への感謝の念を忘れず、国産品を選ぶという意識改革も、今こそ求められているのではないだろうか。
自由貿易の旗印の下、経済発展を遂げてきた過去の教訓を忘れてはならない。保護主義の蔓延は、世界経済の停滞を招くだけでなく、国際的な分断を深める懸念すらある。米国の動きは、その警鐘である。我が国が、自由貿易の原則を守り、食料自給率という国家の根幹を守り抜くため、今こそ、政治、経済、そして国民一人ひとりが、その覚悟を示す時である。
東北の米を守る！アメリカの関税措置について話し合いました,農林水産省
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