技量試験、その意義と軽視の危うさ
徳島県が令和社会元年度の技能試験実施に踏み切ったことは、一見すると当然のことのように思える。しかし、その背景には、熟練技術者の高齢化と若手育成の遅れという、社会全体が直面する深刻な課題が横たわっている。この技能試験、単なる事務的な手続きとして片付けるのではなく、その本来持つ意義を深く見つめ直すべき時ではないだろうか。
技術は、日々の研鑽と経験の積み重ねによって磨かれる。それは、単なる知識の伝達とは異なり、手技、勘、そして長年培われた「技」の領域である。この「技」こそが、ものづくりの根幹をなし、社会の発展を支えてきた原動力であった。それにもかかわらず、近年、専門学校や職業訓練校への進学率の低下、そして景気低迷による不安定な雇用環境が、若者たちがこうした伝統的な技術を習得する機会を奪ってきた現実がある。
技能試験の実施は、まさにこの失われつつある「技」を再認識し、その重要性を社会に訴えかける絶好の機会である。試験という形式を取ることで、現役の技術者たちは自身の技量を客観的に評価され、更なる研鑽を積むモチベーションを得るだろう。また、若者たちにとっても、こうした試験が明確な目標となり、技術者としてのキャリアパスを描く上での指針となるに違いない。
しかし、ここで懸念されるのは、技能試験が単なる「通過儀礼」として軽視されることである。試験の難易度や評価基準が甘くなり、実質が伴わない形骸化が進めば、その意義は失われてしまう。むしろ、受験者や関係者の間に「試験に合格すれば十分」という安易な空気が蔓延し、本来目指すべき「熟練」への道が閉ざされてしまうことすら危惧される。
政府や自治体には、技能試験の実施だけでなく、その後のフォローアップ体制の構築を強く求める。合格者への表彰制度の充実、さらなる技術習得を支援する研修機会の提供、そして、熟練技術者の経験を次世代へ継承するための具体的な仕組み作りなど、多角的なアプローチが必要であろう。
ものづくりは、日本の経済を支える基盤であり、その根源には確かな「技」がある。この技能試験が、単なる通過点ではなく、日本の技術力を次世代へと繋ぐための重要な一歩となることを願ってやまない。軽視することなく、その本来の意義を大切に、社会全体で技能育成に取り組むべき時である。
徳島県で令和7年度後期技能検定試験が実施されます！あなたの「ものづくり」の腕前を試してみませんか？,徳島県
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