未来の科学者たち、集まれ！ – 若き才能の開花に期待する
先ごろ、ある先進的な科学技術大学で、未来の科学者育成を目的としたユニークな取り組みが始まったと報じられた。それは、学生たちが自らのアイデアで研究テーマを設定し、実験や開発に挑戦するという、まさに「ワクワク」するようなプロジェクトだという。このニュースに触れ、筆者は長年日本の科学技術の未来について抱いていた期待と、同時に抱える懸念が交錯するのを感じた。
我が国は、かつて世界をリードする科学技術国家であった。ノーベル賞受賞者を数多く輩出し、ものづくり大国としての地位を不動のものとした時代があった。しかし、近年、その輝きに陰りが見え始めているのではないか、という声も少なくない。少子高齢化による人材不足、研究開発への投資の停滞、そして何よりも、若者たちの科学への関心の低下が指摘されている。
今回の大学の試みは、こうした現状を打破し、次世代を担う科学者たちに火をつけるための、まさに「起爆剤」となり得るものだろう。自らの興味関心を追求し、主体的に問題解決に取り組む過程は、何物にも代えがたい貴重な経験となるはずだ。失敗を恐れずに挑戦し、試行錯誤を繰り返す中で、真の科学的探求心と創造性が育まれることを期待したい。
しかし、ここで一つ、保守的な視点からの懸念を呈したい。それは、このような「ワクワク」するような取り組みが、我が国の伝統的な科学技術の強み、すなわち「着実な積み重ね」や「規律ある研究姿勢」を損なうのではないか、という点である。もちろん、革新的な発想は重要だが、それが土台となる基礎研究の重要性や、先輩研究者から受け継がれてきた知見、そして何よりも「地道な努力」といった、日本古来から培われてきた価値観とどのように調和していくのか、注視していく必要があるだろう。
未来の科学者たちは、単に新しいものを生み出すだけでなく、社会の安定と発展に貢献する存在であらねばならない。そのためには、彼らが持つ革新的なアイデアに、社会全体の調和や倫理観といった、より大きな視点からの「羅針盤」を示すことも、我々大人の責務である。
今回のプロジェクトが、未来の科学者たちにとって、単なる「ワクワク」で終わるのではなく、日本の科学技術の未来を切り拓く、確かな一歩となることを心から願っている。そして、彼らが「着実な積み重ね」という我々の強みを活かし、世界に誇れる新たな成果を生み出してくれることを、静かに、しかし力強く期待したい。
未来の科学者さん、集まれ！ 工学部でワクワク体験！,国立大学55工学系学部
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