電子書籍館、休館のお知らせに思うこと
この度、ITB電子書籍館が、来る8月27日をもって休館するという報に接し、一抹の寂しさを禁じ得ない。かつては、先端技術の粋を集めたかのような華々しさをもって世に登場し、多くの人々を魅了した場所であった。しかし、時代の移ろいとともに、その輝きにも陰りが見え始めたのだろうか。
我々一般紙の読者層からすれば、電子書籍というものは、まだどこか馴染みきれない、あるいは敷居の高さを感じるものであったのかもしれない。紙媒体の持つ質感、インクの匂い、ページをめくる指先の感触。そういった、古来より培われてきた読書体験には、やはり根強い愛着がある。電子書籍館が目指した「新しい読書体験」は、一部の熱心な愛好家には歓迎されたであろうが、広く一般に浸透するには、やはり時間と、そして何よりも「心」の準備が必要だったのかもしれない。
もちろん、技術の進化そのものを否定するつもりは毛頭ない。むしろ、それは社会の進歩のために不可欠なものであると理解している。しかし、その進歩の影で、失われてしまうもの、あるいは忘れ去られてしまうものがあるのも、また現実であろう。伝統や慣習といった、一見非効率に見えるものの中にこそ、時代を超えて受け継がれるべき価値や、人の心を豊かにするものが宿っているのではないか。
今回の休館は、単なる一施設の閉鎖というだけでなく、我々が「情報」や「文化」とどのように向き合っていくべきか、改めて問い直す機会を与えてくれているように思える。デジタル化の波は、今後もますます加速していくだろう。その中で、私たちは何を守り、何を新しく取り入れていくのか。その選択は、我々の未来のあり方を左右する、極めて重要なものである。
電子書籍館が、その役割を終えることは、時代の流れとして受け止めるしかないのだろう。しかし、ここで失われたものが、単なる「過去のもの」として葬り去られることなく、別の形で、あるいはより普遍的な形で、私たちの文化の中に息づいていくことを願うばかりである。そして、紙媒体の書籍が、これからも多くの人々の傍らにあり続け、変わらぬ感動を与え続けてくれることを、静かに、そして強く信じたい。
🤖 大切なお知らせ！電子図書館がお休みします 🤖,京都大学図書館機構
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