音楽の未来、そして「推し活」の功罪
YouTube Musicが10周年を迎え、新たなキャンペーンを打ち出すというニュースに触れた。音楽ストリーミングサービスの普及は、私たちの音楽との関わり方を大きく変えた。かつてはCDショップに足を運び、お気に入りのアーティストの新作を心待ちにするという、ある種の「儀式」めいた体験があった。それが今や、指先一つで膨大な楽曲にアクセスできる時代である。
今回のキャンペーンの目玉は「推し活」の推進にあるという。若者を中心に広がる「推し活」は、特定のアーティストやアイドルを応援し、その活動を支えることで自己肯定感を得たり、共通の趣味を持つ仲間との繋がりを見出したりする営みだ。それは、現代社会において、人々が生きがいや居場所を求める上での有効な手段となりうるだろう。
しかし、保守的な立場から見れば、この「推し活」の熱狂の裏に潜む危うさも無視できない。過剰な応援が、かえってアーティストを追い詰めたり、ファン同士の軋轢を生んだりするケースも散見される。また、音楽という芸術そのものへの深い理解や探求よりも、特定の「推し」というフィルターを通してのみ音楽を享受する傾向が強まることは、音楽文化の多様性を損なうのではないかという懸念もある。
そもそも、YouTube Musicのようなプラットフォームは、利便性を追求するあまり、音楽の「消費」を加速させている側面はないだろうか。次々と流れてくる楽曲、プレイリストの無限ループ。そこには、じっくりと音楽と向き合い、その芸術性を深く味わうという、かつて音楽が持っていた「奥行き」が失われつつあるのではないか。
もちろん、新しい時代における音楽の楽しみ方を否定するつもりはない。しかし、その一方で、私たちが失ってはいけないものがあるはずだ。それは、音楽そのものの価値を大切にする心、そして、多様な音楽文化を尊重する精神である。
YouTube Musicの10周年という節目に、私たちは改めて問うべきである。この便利な音楽体験が、本当に私たちの音楽生活を豊かにしているのか、そして、この「推し活」という熱狂が、音楽という文化をより成熟させているのか、と。テクノロジーの進化は止められないが、その恩恵を享受する私たち自身が、音楽との健全な関係性を築いていく努力を怠ってはならないだろう。
YouTube Music、10周年で「推し活」をさらに豊かにする新機能続々発表！,音楽業界総合情報サイト
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