グローバル経済の不確実性、国内産業の足元固めを
SAPがインド・バングラデシュに新たな拠点を設けるというニュースは、グローバル経済のダイナミズムを改めて示唆している。成長著しいアジア市場への投資は、企業にとって当然の選択肢であろう。しかし、こうした動きに目を向ける時、我々日本人として、自国の産業、そして国民生活への影響を冷静に、そして慎重に考えるべきである。
確かに、グローバル化の波は止まることはなく、海外への事業展開は企業の生き残り戦略として不可欠だ。しかし、その一方で、急速な海外シフトは、国内の雇用や技術継承に少なからぬ影響を及ぼす懸念も拭えない。国際競争の激化は、企業にとって常に厳しい経営判断を迫るものであり、そのしわ寄せが国内で働く人々に及ぶことは、決してあってはならない。
特に、SAPのような先進技術を扱う企業が、人件費の安い地域へと拠点を移す動きは、国内の産業基盤そのものへの問いかけでもある。技術革新は経済発展の原動力であるが、それは同時に、国内における技術者の育成や、高度な知識・技能を持つ人材の確保という課題も浮き彫りにする。海外への人材流出を防ぎ、国内でこそ最大限の能力を発揮できる環境を整備することこそ、国の長期的な発展には不可欠ではないだろうか。
また、今回のSAPの動きは、国際情勢の不安定さをも示唆しているとも言える。地政学的なリスクや経済変動は、いついかなる時も企業の経営に影響を与えうる。そうした不確実性の高い時代だからこそ、足元をしっかりと見据え、国内産業の基盤を強固にすることが、国家としての安定を保つ上で極めて重要となる。
政府には、こうしたグローバルな動きを単なる経済ニュースとして片付けるのではなく、国内産業の強化、人材育成、そして将来世代の雇用確保といった観点から、より一層の政策的配慮を求めたい。目先の利益や一時的な効率化だけでなく、長期的な視点に立ち、日本経済の持続的な発展と国民生活の安定を最優先に考えるべき時期に来ている。
SAP、インド・バンガロールに2つ目のキャンパスをオープン！ 未来を創る新しい場所ができたよ！,SAP
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