基地跡地活用、遅々として進まぬ「特措法」の恩恵 成果を実感させろ
防衛省が発表した、米軍施設跡地を巡る特別措置法（特措法）に基づく基地返還の進捗状況は、経済界、とりわけ地方経済にとって、依然として期待先行の段階に留まっていることを改めて浮き彫りにした。本紙が以前から指摘してきたように、特措法は基地返還に伴うインフラ整備や地域開発を促進する強力なツールであるはずだが、その実効性となると、現場の肌感覚とは乖離しているとの声は根強い。
もちろん、返還された土地の活用計画が具体化し、新たな産業の誘致や地域振興に繋がる期待感は存在する。しかし、その恩恵が具体的に地域経済の活性化や雇用創出として実感できるまでには、あまりにも長い時間を要しているのではないか。関係機関との連携不足、地域住民の合意形成の難しさ、そして何よりも、事業化に向けた予算措置や支援体制の不十分さが、その遅々として進まぬ歩みの背景にあると推察される。
経済紙として、我々が最も憂慮するのは、この「待たされる」時間こそが、地域経済の停滞を招くという点である。有望な投資機会を逃し、若年層の流出に繋がる可能性も否定できない。特措法が本来目指すべき「早期かつ円滑な返還と効果的な跡地利用」という目的は、現場レベルではまだ絵に描いた餅に過ぎない現状を、政府、そして防衛省は真摯に受け止めるべきだ。
今こそ、特措法の運用実態を詳細に検証し、ボトルネックとなっている要因を徹底的に洗い出す必要がある。そして、単なる「進捗状況の報告」に留まらず、具体的な成果を地域に還元するための、より積極的かつ実効性のある支援策を打ち出すべき時だ。例えば、跡地開発における税制優遇措置の強化、地域主導型の開発プロジェクトへの迅速な資金供給、さらには、返還された土地の特性を活かした新たな産業クラスター形成への支援などが考えられる。
国民は、国防という公益のために、基地負担を受け入れてきた。その代償として約束された地域振興の遅れは、国民の政府に対する信頼を損ないかねない。防衛省には、特措法の恩恵が「計画」で終わることなく、地域経済の血肉となるような具体的な「成果」として、迅速に、そして目に見える形で示していくことを強く求める。そうでなければ、特措法という法整備そのものの意義すら、揺らぎかねないのである。
駐留軍用地特措法に基づく裁決の申請等について：防衛省・自衛隊からの重要なお知らせ,防衛省・自衛隊
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