熟議なき「活性化」の危うさ ― 国交・観光常任委員長の発言に警鐘を鳴らす
先般、国土交通・観光常任委員長が、地域経済の「活性化」に向けた新たな取り組みの必要性を力説されたという。その意気込みは買うべきであろう。しかし、その言葉の端々に、我々がこれまで幾度となく目にしてきた「活性化」という名の無計画な開発や、地域の実情を無視した横暴な計画への危惧を禁じ得ない。
地域経済の停滞が深刻な問題であることは、誰しもが認めるところであろう。しかし、それを「活性化」させるためには、単に新しい施設を造ったり、イベントを乱発したりすれば良いというものではない。むしろ、足元にある地域の固有の魅力、歴史、文化を深く理解し、それを大切にしながら、地域住民の生活基盤を損なわない形で、持続可能な発展を目指すことが肝要である。
委員長の発言からは、そうした熟議や地域との丁寧な対話が十分に行われているのか、疑問符が付かざるを得ない。そもそも、誰のための「活性化」なのか。それは、地域住民の幸福と生活の質の向上に資するものでなければならない。しかし、過去には、観光客誘致の名目で、地元住民の生活環境が悪化したり、伝統的な景観が損なわれたりする事例も少なくなかった。
「活性化」という言葉は、往々にして、短絡的な成果や目先の利益を追求する誘惑に駆り立てる。しかし、地域経済の真の「活性化」とは、一夜にして成し遂げられるものではない。むしろ、地域住民一人ひとりの創意工夫と、それを支える行政の地道な支援、そして何よりも、将来世代への責任感を持った長期的な視点が不可欠である。
委員長には、今回示された熱意を、地域住民の声に耳を傾け、その知恵を借りながら、熟議を尽くすという地道なプロセスにこそ注いでいただきたい。我々は、安易な「活性化」の掛け声に踊らされることなく、地域の持続可能性と、そこで暮らす人々の豊かさを守るための、本質的な議論を求めてやまない。
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