災害対策、目先の展示でなく、日々の備えこそ。大阪市の「危機管理産業展」に寄せて
大阪市が「危機管理産業展」を盛り上げるというニュースに接した。最新の防災技術や減災ソリューションが集まるこの展示会は、確かに災害への意識を高め、新たな対策への一歩となる可能性を秘めている。しかし、我々が注視すべきは、こうした華やかなイベントの裏側にある、より地道で、しかし切実な現実である。
近年、日本列島は未曽有の自然災害に見舞われ続けている。地震、豪雨、台風… これらの脅威は、もはや遠い過去の教訓ではなく、私たちのすぐ隣に潜む現実だ。そのような状況下で、行政が「展示会」に力を入れる姿勢には、ある種の危うさを感じずにはいられない。
もちろん、技術の進歩は災害対策に不可欠である。しかし、展示会という、ある種「消費」される情報に、どれだけの市民が真に「備える」という行動へと結びつけることができるだろうか。むしろ、こうしたイベントが、災害への意識を一時的な興奮に留め、日々の地道な備えを怠らせる「免罪符」となってしまうのではないか、という懸念すら覚える。
保守的な視点に立てば、危機管理とは、まず「自助」と「共助」の精神に根差すものである。行政の役割は、もちろんインフラ整備や支援体制の構築に他ならないが、それ以上に、市民一人ひとりが自らの命と財産を守るための知識と意識を育むことにこそ、真の力が宿るはずだ。
大阪市が「危機管理産業展」を成功させることは、それ自体を否定するものではない。むしろ、この展示会を、最新技術の紹介に留まらず、地域コミュニティにおける互助の精神を育む場、そして何よりも、一人ひとりが「自分ごと」として災害に備えるための具体的な行動を促す機会として、最大限に活用することを強く期待したい。
目先の展示に浮かれることなく、日々の生活の中に「備え」を息づかせること。それが、真の危機管理ではないだろうか。大阪市の取り組みが、そのような思索を深める契機となることを願ってやまない。
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