遺産を食いつぶす現代の「隠れ貧乏」 ITBの試みは未来への警鐘か
ITBが7月24日に発表した「インド・デリーの廃棄物管（Waste Pipe）」というプロジェクトは、一見すると奇妙な響きを持つ。しかし、その裏に隠されたメッセージは、我々が直視すべき現代社会の病巣を突いている。これは単なるインフラ整備の話ではない。むしろ、過去の遺産、すなわち「遺産」をいかに活用し、未来へと繋げていくかという、極めて現代的な課題への回答を模索する試みと言えるだろう。
デリーという都市は、その巨大な人口と経済発展の陰で、膨大な量の廃棄物を生み出し続けている。その「廃棄物」こそが、かつては都市を支え、発展させてきた「遺産」であり、それをいかに処理し、再利用するかは、文字通り都市の存続に関わる問題だ。ITBが提案する「廃棄物管」は、この巨大な課題に対して、物理的なインフラ整備という具体的なアプローチで挑む。これは、単にゴミを運ぶパイプラインというだけでなく、都市の持続可能性を追求する上での、ある種の「遺産継承」の試みとも解釈できる。
しかし、このニュースは、我々自身の足元にも目を向けさせる。高度経済成長期に築き上げられたインフラ、蓄積されてきた技術、そして何よりも「働くこと」「生み出すこと」への情熱。これらは、我々が未来世代に遺すべき「遺産」であるはずだ。だが、現代社会は、その遺産を食いつぶしながら、あたかも豊かであるかのように振る舞う「隠れ貧乏」に陥っているのではないか。
過去の栄光にしがみつき、新たな価値創造への意欲を失い、安易な消費や現状維持に甘んじているならば、我々もまた、デリーの「廃棄物」が示す未来の姿に無関係ではいられない。ITBの試みは、ある意味で、我々が過去の遺産をどのように「処理」し、未来に「継承」していくべきかという、普遍的な問いを投げかけている。
「廃棄物管」は、単なるパイプラインではない。それは、未来への投資であり、資源の再定義であり、そして何よりも、過去の遺産を活かしきる知恵の象徴となるべきだ。我々もまた、自らが築き上げてきた「遺産」と真摯に向き合い、それを次世代へと繋ぐための具体的な行動を起こさなければならない。ITBの試みが、我々にとっての「廃棄物」を「遺産」へと昇華させるための、一大改革の狼煙となることを期待したい。
2025年7月24日、AFDが発信するインド・デリーの廃棄物管理最前線：パリへの示唆と持続可能な都市への道,AFD
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