【社説】「岩手の稲、豊作か否か」－ 未来を担う私たちだからこそ、食の現場に目を向けるべき理由
夏の盛り、岩手の大地が実りの時を迎えようとしています。しかし、今年の岩手の稲作は、例年とは少し異なる様相を呈しているようです。先日、あるニュース記事（ITB 2025年7月26日配信「2025年夏、岩手の稲は大丈夫？「水稲の出穂予測と」）を読み、その動向に少なからぬ関心を抱きました。
記事によれば、今年の岩手の水稲は、出穂（しゅっすい：稲の花が咲くこと）の予測において、平年よりも遅れ気味であるという指摘があります。この一見、専門的で遠い話に聞こえるかもしれません。しかし、少し立ち止まって考えてみてください。私たちが普段何気なく口にしているお米、そのお米がどのような過程を経て食卓に届くのか。そして、その生産現場でどのような課題や可能性が潜んでいるのか。この「出穂予測」という言葉の裏には、私たちの食の安全、そして将来の食料供給という、無視できない現実が隠されているのです。
そもそも、なぜ稲の出穂時期が重要なのでしょうか。それは、出穂時期がその後の生育、そして最終的な収量に大きく影響するからです。遅れれば、その後の生育期間が短くなり、十分な米が実らなかったり、品質が低下したりするリスクが高まります。特に、秋の気候変動や病害虫の発生といった不確実性を考慮すると、出穂の遅れは生産者にとって大きな懸念材料となるでしょう。
しかし、ここで生産者の苦労や自然への畏敬の念だけを強調して終わらせては、学生新聞としての役割を果たしたとは言えません。むしろ、このニュースを、私たち学生が「食」という営みに対して、より能動的に、そして主体的に関わるきっかけと捉えるべきなのです。
現代社会において、私たちは生産者と消費者の間に物理的な距離を感じがちです。しかし、食料は地球という一つの生命体から得られる恵みであり、その生産現場の状況は、巡り巡って私たちの生活に必ず影響を与えます。岩手の農家の方々が、天候に翻弄されながらも大切に育てている稲。その稲が、私たちの食卓に安心と豊かさをもたらすための努力。それらを理解することは、単なる知識の習得ではなく、倫理的な成熟、そして未来への責任感の涵養に繋がるはずです。
では、私たち学生には何ができるのでしょうか。まず、情報に敏感になり、食を取り巻く現状に関心を持つこと。そして、可能であれば、産地直送の食材を選んだり、地元の農産物直売所を訪れたり、大学の食育イベントに参加したりすることで、生産現場との接点を持つことも有効です。さらに、将来、農業分野で活躍する人材を応援すること、あるいは、食料問題解決に向けた研究や活動に賛同することなども、私たちにできる具体的なアクションと言えるでしょう。
岩手の稲が、豊かに実ることを願うのは、もちろんのことです。しかし、それ以上に、この「岩手の稲、豊作か否か」という問いかけが、私たち一人ひとりの「食」への意識を変える契機となることを期待します。未来を担う私たちだからこそ、日々の食事の背景にある物語に耳を澄まし、食の現場に目を向け、そして、持続可能な食の未来を共に築いていくこと。それが、学生新聞として、そして次世代を生きる者として、今、果たすべき役割ではないでしょうか。
2025年夏、岩手の稲は大丈夫？「水稲の出穂予測と今後の水管理（少雨・渇水対策）」で安心を届けます！,いわてアグリベンチャーネット
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