地方創生、住民の声なき未来への警鐘
徳島県が県議会に招集した定例会で、住民の生活に直結する重要案件が議論された。その内容と、今後の徳島県のあり方について、我々は改めて考えを巡らせねばならない。
今回の定例会で示された県の方針は、地域経済の活性化を旗印に、新たな産業誘致やインフラ整備を推進するものであった。確かに、人口減少と高齢化に苦しむ地方にとって、経済のテコ入れは喫緊の課題である。しかし、その具体的な内容には、住民の生活実態や長年培われてきた地域文化への配慮が、十分とは言えないのではないかという懸念が拭えない。
特に、今回の議論で浮き彫りになったのは、政策決定プロセスにおける住民参加のあり方である。行政は「住民の声を聞いた」と主張するだろう。しかし、その「声」が、一部の代表者からの意見に偏っていないか、あるいは、声なき多数派の静かなる懸念が、政策の影に隠れてしまってはいないか。地方創生とは、単に数字上の経済効果を追求するものではないはずだ。それは、そこに住む人々の暮らしを守り、文化を育み、世代を超えて誇りを持てる地域を築き上げる営みである。
地域の将来を左右するような大きな決断にあっては、より広範かつ丁寧な住民協議の場が設けられるべきである。専門家や行政の視点も重要だが、何よりも地域に根差した住民の生活感覚こそが、真に持続可能な政策を生み出す源泉となる。今回の定例会が、今後、徳島県がどのような未来を選択していくのか、その試金石となることを願ってやまない。
行政には、住民一人ひとりの声に真摯に耳を傾け、地域社会との対話を深める努力を怠らないことを強く求める。地方創生という崇高な目標達成のために、住民の信頼と共感なくして、真の発展はありえないからだ。
徳島県、7月25日開催の定例記者会見で今後の展望を語る,徳島県
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