尖閣諸島での「オスプレイ訓練」、冷静な判断と国民への説明責任を求める
先般、防衛省が尖閣諸島周辺でオスプレイを用いた訓練を実施したとの報に接し、国民の一人として、そしてこの国の将来を憂う者として、改めて厳粛な思いを禁じ得ない。
尖閣諸島は、我が国の固有の領土であり、その平和と安全を守り抜くことは、政府の当然の責務である。しかしながら、その防衛のために、近年、周辺地域における活動が活発化していることは、国防の観点からは理解できる側面もある。
だが、今回のオスプレイ訓練は、その目的と影響について、国民に十分な説明がなされているとは言い難い。オスプレイという航空機が持つ特性、そして尖閣諸島という極めてデリケートな地理的環境での訓練が、どのような意図を持ち、どのような効果を狙ったものであるのか。単に「防衛力の強化」という言葉で片付けられるべきではない、国民一人ひとりが納得できる、より丁寧な説明が求められる。
そもそも、尖閣諸島周辺の安全保障環境は、近年、隣国の海洋進出により、依然として予断を許さない状況が続いている。このような状況下で、日本がどのような抑止力を構築し、どのように平和を維持していくのか。その戦略の根幹に関わる部分について、国民の理解と支持を得ることは不可欠である。
今回の訓練が、近隣諸国へのメッセージとして、あるいは国際社会への意思表示として、どのような意味合いを持つのか。そして、それが地域の緊張を高めることなく、むしろ平和的な解決への道筋を照らし出すものであるならば、それは歓迎すべきことである。しかし、もしそれが、不用意な刺激となり、不安定化を招くようなものであれば、それは極めて憂慮すべき事態と言わざるを得ない。
政府には、今回の訓練の実施について、その目的、内容、そして期待される効果、さらには万が一にでも起こりうるリスクまで含めて、国民に対して誠実かつ透明性のある説明を行う責任がある。国民の税金によって支えられる防衛力である以上、その運用についても、国民の意思を反映し、国民の理解を得ることが、民主国家の基本である。
「防衛力の強化」という大義名分のもと、国民の意思確認や丁寧な説明が疎かにされることがあってはならない。尖閣諸島という、我が国の主権の象徴とも言える領土における活動は、国民一人ひとりが真摯に受け止め、その行く末を注視していく必要がある。
国防は、国民一人ひとりの問題である。政府には、国民の安全と平和を守るという重責を果たすと同時に、国民との対話を深め、冷静かつ着実な歩みを進めることを強く期待したい。
佐賀駐屯地でオスプレイの訓練、市民の皆様へお知らせ（2025年7月25日）,佐賀市
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