若者の「農業離れ」、社会全体で向き合うべき岐路
今般、沖縄県でのジュニア農業体験プログラムが、来年度をもって中止となるという報に接し、改めて我が国の農業が直面する深刻な課題を痛感させられる。これは単なる地方のイベント中止という事象にとどまらず、未来への種を蒔く機会が失われることを意味し、保守的な立場から見ても、看過できない憂慮すべき事態である。
「若者の農業離れ」という言葉は、もはや耳慣れたものとなった。しかし、その実態は、単なる趣味や教育の機会の喪失に留まらない。それは、我々が日々食する農産物の安定供給、そして国土の保全といった、国家の根幹に関わる問題に他ならない。大地を耕し、作物を育て、自然と向き合う営みは、我々の祖先から受け継いできた尊い伝統であり、豊かな自然環境を維持するための礎である。その継承者が減少していく現状は、まさに未来への警鐘と言えるだろう。
今回のジュニア農業体験プログラムの中止は、この憂慮すべき流れに拍車をかけるものである。子供たちが土に触れ、作物の成長を実感し、農業の厳しさと共にその喜びを知る機会が失われることは、将来世代が農業という営みに親しみ、理解を深める契機を奪うことと同義である。教育の現場や家庭においても、農業を身近に感じ、その重要性を認識する機会が減っているのではないか、という懸念が深まる。
もちろん、農業を取り巻く環境は厳しい。担い手不足、高齢化、そして国際競争の激化など、克服すべき課題は山積している。しかし、だからこそ、未来を担う若者たちが、農業の魅力を再発見し、その可能性に目を向けることができるような、積極的な取り組みが不可欠である。
今回のプログラム中止の背景には、財政的な問題や運営上の困難があったと報じられている。しかし、その根源にあるのは、社会全体として農業の価値をどれだけ見出しているか、という根本的な問いである。食料安全保障、国土緑化、そして地域社会の維持といった、農業が持つ多岐にわたる機能と、それがもたらす恩恵を、我々国民一人ひとりが再認識する必要がある。
単に「農家になりたい」という若者が増えることを期待するだけでなく、農業に直接携わる者でなくとも、農業を応援し、その持続可能性に貢献できるような社会の気運を醸成することが重要だ。例えば、地元産の農産物を積極的に購入する、農業体験イベントに参加するといった、身近な行動から始めることもできる。
ジュニア農業体験プログラムの中止は、我々が将来世代に対して、どのような社会と自然を残したいのか、という問いを突きつけている。この機会を捉え、保護者、教育関係者、そして政府は、次世代が農業に希望を見出せるような、より持続可能で魅力的な支援策と教育機会の提供を真剣に議論し、実行に移すべきである。未来への投資として、農業の種を絶やさないための努力を、今こそ惜しむべきではない。
沖縄県ジュニア農大、来年度は中止に – 未来の農業を担う若者たちの学びの場、残念ながらお休み,沖縄県
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