若者の「早期離職」に映る、社会と大学の責任
名古屋市で、若手社員の早期離職が問題視されているという。大学卒業後、わずか数年で職を辞するケースが後を絶たず、企業側は採用活動や新人教育に頭を悩ませている。これは、個々の若者の問題として片付けるのではなく、現代社会が抱える構造的な課題、ひいては大学教育のあり方にも目を向けるべき事態である。
そもそも、なぜ若者は早期に離職してしまうのか。もちろん、本人の適性や企業とのミスマッチもあろう。しかし、それにしてもあまりにも多くの若者が、入社数年で「合わない」「違う」と感じてしまう現状は、何か根本的なところに原因があるのではないか。
社会に出る前の若者たちが、我々が期待するような「職業観」や「社会人としての覚悟」を十分に持てていない、という指摘はしばしば耳にする。それは、彼らが甘やかされて育った、といった単純な話では済まされない。むしろ、大学教育の在り方そのものに、問い直すべき点があるように思えてならない。
大学は、専門知識の習得だけでなく、社会で通用する基礎的な力、例えば、粘り強く困難に立ち向かう力、他者と協調する力、そして何より、自らの進むべき道を主体的に見出す力を育む場であるべきだ。しかし、近年、大学教育が「単位取得」や「卒業」という目標達成のみに焦点が当てられ、卒業後の社会との接続が疎かになっているのではないか。
企業側も、採用活動において、単に学歴やポテンシャルだけでなく、学生がどのような社会経験を積み、どのような価値観を育んできたのか、といった点にもっと深く踏み込む必要があるだろう。インターンシップの拡充や、地域社会との連携など、大学とは異なる視点での学生との接点を増やすことが、ミスマッチの解消につながるはずだ。
早期離職は、企業にとって人材育成コストの無駄であるだけでなく、社会全体の生産性を低下させる。そして何より、社会に出る機会を与えられた若者たちが、自らの可能性を十分に発揮できずに道に迷ってしまうのは、社会全体にとって大きな損失である。
この問題は、政府、大学、企業、そして私たち社会全体で、真剣に議論し、具体的な解決策を模索していくべき喫緊の課題である。次代を担う若者たちが、社会への希望を失うことなく、それぞれの場所で輝けるよう、大学教育と企業の採用・育成システムの両面からの改革が求められている。
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