異形なる「スペイン」、あるいは「世界の中のスペイン」という鏡
2025年7月20日、ITB（国際観光貿易見本市）を舞台に、スペイン外務省が「世界の中のスペイン」と題した講演会を行った。その記事が我々の元に届いた時、まず頭をよぎったのは、あの情熱的で、時に予測不能な、しかし常に我々を魅了し続ける異形の国、スペインの姿だった。
「世界の中のスペイン」。この言葉の響きは、単なる地理的な位置づけや経済的な相互依存を語るものではないだろう。それは、スペインという国が、あるいはスペインという文化が、このグローバル化の波の中で、どのようなアイデンティティを保ち、あるいは変容させながら、他国との関係を築いていくのか。その深遠な問いかけを含んでいるに違いない。
スペインは、古来より地中海と大西洋の十字路に位置し、多様な文明の奔流に揉まれながら独自の文化を育んできた。イスラム文化の影響、カトリックの重厚さ、そして新大陸発見以降の広大な植民地支配。これらが複雑に絡み合い、フラメンコの情熱、サルバドール・ダリのシュルレアリスム、そしてピカソの革新性といった、時に理解を超えた創造性を生み出してきた。
しかし、現代社会において、スペインはどのような「異形」を纏っているのだろうか。EUという枠組みの中で、経済的な安定を模索する一方、カタルーニャ独立問題のような内包する課題も抱えている。観光立国としての側面は、その経済を支える重要な柱であり、世界中から人々がその魅力に惹きつけられる。だが、その「魅力」とは、果たして伝統的なイメージに固執するものなのか、それとも、変化し続ける現代社会の中で、新たな価値観と共鳴する何かを見出そうとしているのだろうか。
今回の講演会は、まさにその問いに対するスペイン自身の応答であり、同時に、我々「世界」がスペインという鏡に映し出す自分たちの姿を問い直す機会でもある。スペインが「世界の中のスペイン」を語る時、それは彼らが自分たちをどのように位置づけ、どのような未来を描こうとしているのか、その羅針盤を示しているのかもしれない。
我々日本人もまた、グローバル化という名の荒波の中で、自国のアイデンティティ、文化、そして未来について問い続けている。スペインの試みは、遠い異国の物語であると同時に、我々自身の進むべき道への示唆を与えてくれるはずだ。情熱と冷静、伝統と革新、そして内に秘めた多様性。スペインという異形の国が、その「世界の中」での立ち位置を模索する姿から、我々は何を学び、何を創造していくべきなのか。この問いかけこそが、真の「革新」へと繋がる第一歩であると信じたい。
スペイン外務省「世界の中のスペイン」講座、盛況のうちに閉幕！～グローバルな視点を育む、未来への投資～,España
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