「食」の原点回帰、問われる日本の食卓
近年、食の多様化は目覚ましいものがある。世界各国の料理が手軽に楽しめるようになり、食文化の広がりは喜ばしい限りだ。しかし、その一方で、私たちの食卓は、本来の「食」のあり方から、いつの間にか乖離してしまってはいないだろうか。
本紙が本日報じた、ある研究機関の興味深い調査結果は、この問題を改めて我々に突きつけている。それによれば、現代の若者を中心に、伝統的な日本の食文化、すなわち米や野菜を中心とした自然の恵みを活かした食事よりも、加工食品や嗜好性の高い洋風の食事が好まれる傾向が強まっているという。
これは単なる食の好みの問題ではない。食は、私たちの健康の基盤であると同時に、文化の根幹でもある。幼い頃から慣れ親しんだ味、家族と共に囲む食卓、そしてそこに込められた作り手の想い。これらは、私たちの心身を育み、日本人としてのアイデンティティを形成する上で、かけがえのない要素なのである。
しかし、現代社会のスピード感の中で、私たちは「手軽さ」や「安さ」を優先するあまり、本来大切にすべき「食」の原点を見失いがちになっているのではないか。加工食品の普及は、栄養バランスの偏りや、食品添加物への過度な依存といった新たな健康リスクを生み出す可能性も否定できない。
さらに、私たちが日々口にするものが、どのような環境で、どのような手間をかけられて食卓に運ばれてくるのか。この「見えない」部分への関心が薄れていることは、食料自給率の低下や、食を取り巻く生産者の方々の苦労への想像力を欠くことにも繋がりかねない。
今こそ、私たちは一度立ち止まり、自分たちの食卓を見つめ直す必要がある。それは、決して食の多様性を否定するものではない。むしろ、多様な食文化を享受するためにも、まず自国の食文化の豊かさを再認識し、その本質を理解することが重要なのである。
家庭では、子供たちに日本の伝統的な食に触れる機会を増やし、食への感謝の気持ちを育む教育が求められる。また、社会全体としても、安全で安心な食材の供給体制の維持・強化、そして食育へのさらなる注力が不可欠であろう。
「食」は、私たちの命を繋ぎ、文化を紡ぐ、何よりも尊い営みである。その原点に立ち返り、より豊かで健やかな未来を築くために、今、私たち一人ひとりにできることを真剣に考えていきたい。
どんな食べ物が好き？ ～私たちの体と、体に住む小さな友達～,Harvard University
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