マイナンバーカード普及、国民生活への影響を憂慮する
政府が進めるマイナンバーカードの普及政策が、国民生活に新たな波紋を広げている。7月20日付の報道によれば、マイナンバーカードをインフラに活用し、国民事業者を対象としたサービス展開が計画されているという。一見、行政サービスの効率化や利便性向上といった恩恵が期待される一方で、その急速な普及と情報管理体制に対する懸念は、今なお払拭されていない。
マイナンバー制度導入当初から、個人情報の一元管理によるプライバシー侵害のリスクや、情報漏洩時の甚大な被害が指摘されてきた。今回、マイナンバーカードがさらに広範な国民生活のインフラとして位置づけられるということは、そのリスクも比例して増大することを意味する。
確かに、行政手続きの簡素化や、災害時の本人確認の迅速化など、マイナンバーカードがもたらす潜在的なメリットは理解できる。しかし、それらの利便性の追求が、国民一人ひとりの情報に対するコントロール権を疎かにするものであってはならない。国家による個人情報の過度な集積は、自由な社会の根幹を揺るがしかねない危うさを孕んでいる。
また、今回の計画が「国民事業者」を対象としている点にも注目したい。事業者がマイナンバーカードを介して行政サービスを利用するようになることは、その事業活動における政府の監視を強める可能性も否定できない。国民生活の自由な営みが、国家の管理下に置かれるような事態は、断じて避けねばならない。
政府は、マイナンバーカードの普及と利便性向上を追求するあまり、国民が抱える根本的な不安に正面から向き合っているだろうか。情報管理体制の透明性の確保、万が一の際の厳格な責任追及、そして国民一人ひとりの同意に基づいた情報活用といった、国民が安心して制度を利用するための最低限の保証は、依然として十分とは言えない。
マイナンバーカードは、あくまで国民生活を豊かにするための「道具」であるべきだ。それが、国民の不安を煽り、自由な社会を脅かす「監視の目」となるようなことがあってはならない。政府には、国民の声を真摯に受け止め、制度のあり方について、より慎重かつ丁寧な検討を重ねることを強く求めるものである。利便性の追求と、国民の権利・自由の保障とのバランスを、改めて見誤るべきではない。
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