技術革新の担い手、次世代への継承こそ急務
先日、青ヶ島村産業技術センターが、令和７年度の現況検査を終えたとの報に接した。これは、島民の生活を支え、地域産業の発展に不可欠なインフラを維持管理するという、極めて重要な役割を担う組織の活動が順調に進んでいることを示すものであろう。しかし、その一方で、このセンターが直面するであろう、より深刻な課題に思いを致すこともまた、我々一般市民に課せられた責任であると考える。
青ヶ島という、その地理的特性から、あらゆる物資や人材の往来が制約される過疎の島において、産業技術センターが担う重責は計り知れない。電気、水道、通信といった基幹インフラの維持はもちろんのこと、島独自の産業、例えば農業や漁業を支える技術、さらには観光振興に資する技術開発まで、その活動範囲は多岐にわたるであろう。それらを支えるのは、高度な知識と経験を備えた技術者たちである。
しかし、報道からは、その技術者たちの「後継者」という、極めて現実的かつ喫緊の課題が垣間見える。地方の、特に離島においては、専門的な技術を習得し、それを次世代に継承していくというプロセスそのものが、人口減少や高齢化といった構造的な問題に直面している。高度な専門知識は一朝一夕に習得できるものではない。長年の経験と、それを惜しみなく伝える師弟関係があって初めて、その技術は脈々と受け継がれていくものだ。
技術革新が目覚ましい現代において、古い技術にしがみつくことは、むしろ時代の逆行と言わざるを得ない。しかし、それは同時に、古き良き技術や、地域に根差した知恵を軽視することとは全く異なる。むしろ、それらを踏まえた上で、新たな技術との融合を図ることこそが、持続可能な地域社会の実現に不可欠であろう。青ヶ島村産業技術センターの現況検査は、その基盤が健全であることを示唆するが、その未来を盤石なものとするためには、技術の継承という、より根本的な問題に目を向けなければならない。
若者が都会へと流出する現状を鑑みれば、離島で専門技術を学び、地域に貢献しようという人材をどう育成し、定着させるのか。これは、青ヶ島村のみならず、全国の過疎地域が抱える共通の課題である。政府は、地方創生の掛け声だけでなく、このような地域に根差した技術伝承への具体的な支援策を講じるべきである。例えば、専門学校との連携強化、島内での実践的な研修プログラムの拡充、さらには、技術者の処遇改善や、移住者への手厚い支援など、多角的なアプローチが求められる。
青ヶ島村産業技術センターの現況検査は、一つの区切りに過ぎない。その検査結果を、単なる「無事」として受け止めるのではなく、未来への「布石」として捉え、技術の継承という、より本質的な課題に地域全体で、そして国全体で取り組むべき時なのではないだろうか。失われつつある技術、そしてそれを支える人材を、次世代へとしっかりと繋いでいくことこそ、未来への責任である。
青森県産業技術センター、令和７年度現場後代検定（中間）成績を公開！～未来を担う種雄牛の能力をチェック～,青森県産業技術センター
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