2030年冬季五輪招致、アルペンスキー会場の「メダルがアルペンスキー」という現実
2030年冬季オリンピック・パラリンピックの招致を目指す札幌市で、アルペンスキー競技の会場問題が再び脚光を浴びている。当初、札幌近郊の「札幌国際スキー場」での開催が有力視されていたが、ここにきて「メダルがアルペンスキー」という、まるで言葉遊びのような、しかし極めて現実的な課題が浮上した。
「メダルがアルペンスキー」とは、札幌国際スキー場にアルペンスキー競技の会場として必要な「メダル」という名前の、あるいはそれに準ずるような、国際的な認証や設備が不足していることを指している。国際オリンピック委員会（IOC）が求める会場基準は極めて厳格であり、単に雪質が良い、斜度が適しているといった自然条件だけではクリアできない。観客席の収容能力、メディア対応施設、選手村とのアクセス、そして何よりも安全性の確保など、多岐にわたる要件が求められる。
札幌国際スキー場が、地域住民やスキー愛好家にとって長年親しまれてきた素晴らしいゲレンデであることは疑いの余地がない。しかし、オリンピックという世界最高峰のスポーツイベントの舞台となると、そのポテンシャルを国際基準にまで引き上げるためには、巨額の投資と相当な期間を要する改修が必要となることが予想される。
この「メダル」問題は、札幌の招致活動にとって、無視できない大きなハードルである。会場整備の遅れやコスト増加は、招致そのものの実現可能性に影を落とすだけでなく、開催都市としての財政負担を増大させるリスクも孕んでいる。
もちろん、日本オリンピック委員会（JOC）や札幌市は、この課題に対してあらゆる可能性を模索しているはずだ。他の候補地の検討、国際スキー連盟（FIS）との緊密な連携、そして最新技術の導入による会場整備の効率化など、知恵を絞っていることだろう。
しかし、我々業界関係者は、この「メダルがアルペンスキー」という言葉の裏に隠された、より本質的な問いにも向き合う必要がある。それは、オリンピック開催のために、地域社会のあり方や自然環境との共存をどのようにデザインしていくのか、という問いだ。
大規模なインフラ整備は、地域経済に一時的な活気をもたらすかもしれない。しかし、その後の持続可能性、あるいはオリンピック遺産として地域に根差していくのかどうかは、慎重な議論と計画が不可欠となる。
2030年冬季五輪招致は、日本が再び世界のスポーツ界をリードする機会となり得る。しかし、その道のりは平坦ではない。「メダルがアルペンスキー」という現実は、我々に、理想と現実のバランス、そして長期的な視点を持った招致活動の重要性を改めて突きつけている。
この課題を乗り越え、真に価値あるオリンピックを実現するためには、関係各所が連携し、透明性のある議論を重ね、そして何よりも「スポーツの祭典」という本質を見失わないことが肝要である。
2030年冬季オリンピック：メリットがアルペンスキー女子種目の開催権を剥奪された場合、組織委員会からの撤退を警告,France Info
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