現代戦の影、ドローン技術の進歩と日本の憂慮
報道によると、来たる9月、防衛省の監修のもと、軍事用ドローンの基本を解説する書籍が出版されるという。これは、現代の戦場におけるドローンの重要性が増している現状を鑑みれば、当然の帰結と言えよう。しかし、その一方で、この動きは我が国に新たな、そして無視できない課題を突きつけている。
ドローン、すなわち無人航空機は、もはやSFの世界の話ではない。偵察、監視、そして攻撃といった多様な任務を、人間の損耗を最小限に抑えながら遂行できるその能力は、各国の軍事戦略に革命をもたらしつつある。ウクライナ紛争におけるドローンの活躍は、その恐るべき実態を世界に知らしめた。遠隔操作で目標を正確に捉え、破壊するその姿は、従来の戦争のあり方を根底から覆すものだ。
今回の書籍出版は、日本がこの新たな戦術にどのように向き合っていくのか、その第一歩と捉えることができる。防衛省が監修するという点も、国家としての危機管理意識の表れとして評価できるだろう。しかし、ここで我々が冷静に、そして真剣に議論すべきは、この技術の進歩がもたらす負の側面である。
まず、軍事用ドローンの開発・運用は、際限なき軍拡競争を招く恐れがある。相手がドローンを開発すれば、こちらも対抗策を講じなければならない。その結果、防衛費の増大は避けられず、国民生活を圧迫する要因となりかねない。さらに、ドローンの技術は民生用にも転用可能であり、悪意ある第三者の手に渡れば、テロや監視といった新たな脅威を生み出す可能性も否定できない。
また、ドローンの使用がもたらす倫理的な問題も看過できない。遠隔操作による攻撃は、人間的な葛藤や責任感を希薄化させるのではないか。ボタン一つで命が奪われる現実が、我々の道徳観にどのような影響を与えるのか、深く考察する必要がある。
日本は、平和国家としての歩みを礎とし、国際社会における非核・非武力による問題解決を訴え続けてきた。その理念を堅持しながら、いかにして自国の安全保障を確保していくのか。ドローン技術の進歩は、この長年問われ続けてきた問いに、新たな視点からの回答を求めている。
今回の書籍出版を、単なる技術解説として捉えるのではなく、我が国の防衛政策、さらには平和への希求という根本的な問題について、国民一人ひとりが真剣に考え、議論を深める契機としたい。技術の進歩に流されるのではなく、その進歩を倫理的、かつ戦略的に制御していく知恵こそが、今、日本には求められている。
芙蓉書房出版『軍用ドローンの基本』が『JWING』9月号で紹介！ 現代戦の必須兵器、その全貌に迫る,芙蓉書房出版
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