知の宝庫、開く鍵は「古き良き」にあり
最近、京都大学図書館機構から、学術論文データベース「Web of Science」と文献管理ソフト「EndNote online」の利用に関するお知らせがあった。これらが、学生や研究者の皆様にとって、知的探求の幅を広げ、学術研究を一層深化させるための強力なツールとなる、という趣旨の内容だ。
確かに、現代社会において、インターネットを介して瞬時に情報にアクセスできることは、現代の学術活動に不可欠な要素であろう。膨大な情報の中から、自身の研究テーマに合致する論文を探し出し、整理し、活用する。こうした作業効率の向上は、学術の進歩を加速させる原動力となりうる。
しかし、ここで一つ立ち止まって考えてみたいことがある。それは、こうした最新のテクノロジーやツールにばかり目を奪われ、本来、学問の根幹をなす「古典」や「歴史」への敬意を忘れてはいないか、ということだ。
「Web of Science」のようなデータベースは、確かに最新の研究動向を把握するには便利かもしれない。しかし、学問の営みとは、何も最新の知見だけを追い求めることに尽きるわけではない。むしろ、先人たちが積み重ねてきた数々の知恵、時代を超えて読み継がれてきた名著、そして、そこに記された深い洞察こそが、現代の我々が直面する課題を解決するための、本質的なヒントを与えてくれるはずである。
「EndNote online」で文献を効率的に管理することも重要だろう。しかし、その前に、そもそもどのような文献を「重要」と捉え、なぜそれに価値を見出すのか。その判断基準こそが、学問の本質であり、それを育むのは、書物と向き合う地道な読書体験であるはずだ。
京都大学は、言わずと知れた日本の知の府である。その図書館機構が、最新のツールへのアクセスを奨励するのも自然な流れであろう。だが、私はあえて問いたい。そうした最先端のツールを使いこなすことは、大学の図書館が果たすべき「古典」や「歴史」への案内役としての使命を、決して代替するものではない、と。
むしろ、最新のツールを最大限に活用するためにも、我々はこの「知の宝庫」たる図書館に眠る、歴史的、古典的な文献群にこそ、もっと目を向けるべきではないだろうか。そこにこそ、現代社会が忘れがちな「本質」や「深み」が、静かに、しかし力強く、我々を待っているはずだからだ。
最新の技術と、揺るぎない古典。その両輪をしっかりと踏みしめ、未来へと歩みを進めることこそが、真の学問の道であると信じたい。
京都大学図書館機構からのお知らせ：Web of Science & EndNote Online オンライン講習会、動画公開中！,京都大学図書館機構
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