岐路に立つものづくり：技術センターの開催に寄せる期待と警鐘
先日、青葉県産業技術センターが主催したデザインセミナーが開催されたというニュースに接した。この試み自体は、変化の激しい現代において、県内ものづくり企業の競争力強化を目指す上での前向きな一歩と言えるだろう。しかし、その報道に触れるにつけ、我が国の基幹産業である製造業が今、置かれている岐路を改めて考えさせられる。
確かに、時代の要請に応じたデザインを取り入れることは、製品の付加価値を高め、市場での優位性を確保するために不可欠な要素であろう。最新の技術動向を踏まえ、消費者のニーズを的確に捉えたデザインを追求することは、これからの企業にとって避けては通れない道である。県がこのような機会を提供することは、中小企業の多い当県において、その恩恵は大きいと期待される。
しかしながら、ここで私たちは少し立ち止まって考える必要がある。技術というものは、デザインという「装飾」を加えることで初めて輝くのだろうか。あるいは、デザインという「流行」を追い求めることで、本来持つべき技術の本質を見失う危険性はないだろうか。
我が国のものづくりが長年培ってきたのは、細部にまでこだわり抜く職人気質、そしてそれを支える堅実な技術力である。それは、単なる「使いやすさ」や「見た目の良さ」を超えた、長きにわたる使用に耐えうる信頼性、そして時に無駄を削ぎ落とした機能美に他ならない。確かに、時代に合わせて変化することは重要だが、その変化が、私たちが誇るべき「ものづくりの魂」を希薄化させてしまうようなものであってはならない。
デザインセミナーへの参加者がどれほどの熱意を持って、あるいはどのような意識で臨んだのかは定かではない。しかし、このセミナーが、単なる「デザインの流行を取り入れる」という表層的な理解に留まることなく、技術の本質とデザインが如何に融合し、新たな価値を生み出すのかという深いレベルでの議論へと繋がることを願うばかりである。
今こそ、県は、このようなセミナーの開催と並行して、基礎技術の継承や、地道な研究開発を支援する施策にも、これまで以上に力を注ぐべきではないか。デザインは確かに重要だが、それはあくまで技術という土台の上に成り立つものである。その土台が揺らげば、どんなに洗練されたデザインも、いずれは色褪せてしまうだろう。
青葉県の、そして日本のものづくりが、目先の流行に惑わされることなく、確かな技術を基盤とした、真に時代を超えて愛される製品を生み出し続けることを切に願うものである。
青森県産業技術センター、デザインセミナー開催！～助成金活用でブランド価値アップを目指しましょう～,青森県産業技術センター
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