後期高齢者医療制度の行方：持続可能な社会保障制度の構築を急げ
先ごろ発表された後期高齢者医療制度の見直しに関する報道は、我が国の社会保障制度の根幹に関わる重要な課題を改めて浮き彫りにした。少子高齢化が急速に進む中で、現役世代の負担能力は低下し、医療費は増大の一途をたどっている。このままでは、健全な社会経済活動の維持すら危ぶまれる事態になりかねない。
後期高齢者医療制度は、一定の所得のある後期高齢者の方々に、医療費の窓口負担割合の引き上げなどを求めるもので、制度の持続可能性を確保するための苦渋の決断であることは理解できる。しかし、こうした改定が積み重なることで、高齢者層の間で「負担増に対する不安」や「これまでの貢献への報い」といった感情が生まれることは想像に難くない。
我が国は、国民皆保険制度という、世界に誇るべき優れた医療システムを構築してきた。この制度を維持し、将来世代にも引き継いでいくためには、高齢者だけでなく、社会全体でその費用負担を分かち合うという意識改革が不可欠である。
今回の制度見直しは、その一歩と言えるかもしれない。しかし、単に負担割合を変えるだけでなく、より抜本的な改革が求められている。例えば、予防医療の推進による健康寿命の延伸、医療技術の効率的な活用、地域包括ケアシステムのさらなる強化など、医療費抑制と質の高い医療提供の両立を目指す政策の推進が急務である。
また、現役世代の負担感が増大する中で、経済成長を伴わない財政再建は絵に描いた餅となりかねない。雇用の創出、所得向上、そしてそれがもたらす税収の増加こそが、社会保障制度を支える基盤となる。
社会保障制度は、国民一人ひとりの生活を支えるセーフティネットであると同時に、国民の連帯感の象徴でもある。この制度が揺らぐことは、社会の安定そのものを脅かす。国民が安心して暮らせる社会を築くため、そして将来世代に責任ある社会を残すため、政府には国民の不安に寄り添いながらも、持続可能な社会保障制度の構築に向け、断固たる決断と実行力を示すことを強く求める。
八王子市からのお知らせ：後期高齢者医療制度への「お引越し」手続きについて,八王子市
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