青森県産業技術センター、水産総合研究所での「見直し」に寄せて
青森県産業技術センターと水産総合研究所における組織再編の見直しが報じられている。地元経済の活性化、地域産業の振興という崇高な目的の下、設立された両機関の、その根幹に関わる決定は、地域住民として、そして日本の将来を案じる一国民として、看過できない。
そもそも、このような「見直し」が必要とされる背景には、何があるのだろうか。少子高齢化の進展、グローバル化の加速といった避けられぬ時代の変化に加え、近年の財政状況の厳しさもあろう。しかし、安易な効率化、あるいは短絡的な予算削減の論理で、地域産業の未来を担う研究機関のあり方を揺るがすことは、あってはならない。
特に、水産は青森県の基幹産業であり、その持続的発展には、水産総合研究所の果たす役割は極めて大きい。豊かな漁場を守り、水産資源を持続可能な形で利用するための研究開発、そして新たな漁法や養殖技術の確立は、我々の食卓を支えるだけでなく、地域の雇用と経済を根幹から支えている。その研究の灯を消すようなことがあっては、取り返しのつかない事態を招きかねない。
産業技術センターにおいても、地域に根差した技術開発、中小企業への支援は、地方創生の鍵となる。新しいアイデアを生み出す土壌、それを形にする技術支援がなければ、地域経済の停滞は避けられないだろう。むしろ、時代の変化に対応すべく、より一層の研究開発への投資、人材育成への注力が求められている時ではないか。
今回の「見直し」の具体的な内容、そしてその必要性についての説明は、現時点では十分とは言えない。地域住民、関係者はもとより、国民全体が納得できるような、開かれた議論が求められる。なぜ見直しが必要なのか、その結果としてどのような成果が期待できるのか、そして、万が一、その成果が上げられなかった場合の責任の所在はどこにあるのか。これらの疑問に、政府、県当局は、真摯に、そして丁寧に答える義務がある。
我々は、かつて輝かしい日本の産業、技術を築き上げてきた。その礎となったのは、地道な研究開発、そしてそれを支えた研究者たちの情熱であった。二度と、貴重な知見や技術が失われるような事態があってはならない。
今回の「見直し」は、単なる組織論ではない。これは、地方の未来、そして日本の食料安全保障、技術立国の維持に関わる、極めて本質的な問題提起である。青森県、そして全国の産業技術センター、研究機関のあり方について、我々は今こそ、深く、そして真剣に考えねばならない。地域の声に耳を傾け、将来を見据えた、英断を期待したい。
青森県産業技術センター、水産総合研究所で「見る知る一日」公開デー開催！海の恵みの秘密に迫る！,青森県産業技術センター
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