次の「買い替え」は、誰が、何を？ － 経済安全保障と産業競争力の狭間で
先日報じられた、NEXTとFrasersグループがシンガポールで熱視線を送っているというニュースに、我が国の経済界は改めて襟を正すべきだろう。かつて日本の名を世界に轟かせた製造業、とりわけエレクトロニクス分野の隆盛は、今は見る影もなくなってしまった。かつては「世界の工場」と呼ばれた我が国から、今、どのような「次の買い替え」が起きようとしているのか。その行方に、静かな危機感を抱かざるを得ない。
NEXTとFrasersグループ。これらの名は、シンガポールという地政学的な要衝において、新たな経済圏の形成を企図しているように映る。特に、ASEAN諸国との連携を深め、そこに日本の技術や資産が組み込まれていく未来は、決して絵空事ではない。彼らがどのような狙いで、我が国の産業、あるいはその一部に「熱視線」を送っているのか。その真意を、我々日本人は冷静に見極めなければならない。
グローバル化の波は確かに大きい。しかし、その流れにただ身を任せるだけでは、経済大国としての日本の地位は危うい。特に、先端技術、国防にも関わる重要インフラ、そして人々の生活を支える基幹産業においては、安易な海外への依存は、経済安全保障上の大きなリスクとなり得る。かつては世界の先端を走っていたはずの我が国の技術が、今や他国の「次の買い替え」の対象となっている現実を、どう見るべきか。
報道によれば、彼らの関心は「保守的な一般紙」がこれまで主に扱ってきたような、伝統的な産業に留まらないようだ。時代の変化に合わせて、新たな産業分野、あるいはその担い手となる企業群に目を向けている。我々もまた、そうした変化の波を捉え、日本の持続的な成長のために、どのような「次の買い替え」を、そしてどのような「新たな価値」を創造していくべきか、真剣に議論を深める必要がある。
翻って我が国の現状はどうだろうか。少子高齢化、生産性の低迷、そして技術革新への投資の遅れ。これらの課題に、一体どれだけの真剣な取り組みがなされているというのか。経済界のみならず、政府、そして国民一人ひとりが、日本の「次」を真剣に考え、行動する時期に来ている。
シンガポールという遠い国の動向に、日本の産業の未来が左右されるような事態だけは避けたい。我が国の持つポテンシャルを最大限に引き出し、新たな産業の種を育て、そしてそれを確固たるものとしていく。そのためには、目先の利益に囚われず、長期的な視点に立った産業政策、そしてそれを支える社会全体の意識改革が不可欠である。「次の買い替え」が、我が国から富を吸い上げるものではなく、むしろ我が国から世界へ、新たな技術と価値を発信していく契機となることを、切に願うものである。
次の買収候補は？NextとFrasersグループがセリンに熱視線,Drapers Online
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