AI時代の「知」をどう育むか～大学とメディアの責任を問う
先日の報道で、ある大学教授がテレビ番組を通じてChatGPTの活用法を解説したという。AI技術が急速に進化し、社会のあらゆる場面でその影響力が無視できなくなる中で、大学という「知の府」がその最新動向を一般社会に分かりやすく伝える試みは、時宜を得たものと言えるだろう。しかし、その内容が具体的に何を指し示していたのか、そしてそれが私たちの社会にどのような影響を与えうるのか、深く考察する必要がある。
ChatGPTをはじめとする生成AIは、確かに情報収集や文章作成の効率を飛躍的に向上させる可能性を秘めている。学生のレポート作成や研究活動において、その補助的な活用は計り知れない恩恵をもたらすかもしれない。しかし、私たちは忘れてはならない。AIはあくまで「道具」であり、その利用者の「思考力」こそが本質であるということを。
今回のテレビでの解説が、単にAIの使い方を教えるにとどまらず、AIに依存することで思考力が鈍化してしまう危険性についても、十分な警鐘を鳴らしていたのであれば、それは教育的意義深いと言えよう。しかし、もしそれが「AIを使えば楽になる」という側面ばかりを強調していたのであれば、それは大きな誤りである。真の知性は、自ら問いを立て、深く思索し、多様な情報源から吟味するプロセスを経て育まれる。AIは、そのプロセスを助けることはあっても、代替することはできないはずだ。
メディアの役割もまた重要である。今回の報道に際し、AIの利便性だけでなく、その功罪両面を多角的に提示し、視聴者に冷静な判断を促す姿勢が求められる。安易な情報提供は、かえって世論をミスリードする危険性も孕んでいる。大学とメディアは、共に「知」の本質を社会に問いかけ、国民一人ひとりがAI時代において主体的に学び、考え続ける力を養うための責任を負っていると言えるだろう。
AI技術は、私たちの社会を大きく変える力を持っている。その力を賢く、そして倫理的に使いこなすためには、私たち自身の知性を磨き続ける努力が不可欠である。今回の報道を機に、今一度、大学教育のあり方、そしてメディアの情報発信のあり方について、国民全体で議論を深めていくことが肝要である。
東京工科大学・中西崇文教授、TBS「THE TIME,」でChatGPT活用法を解説！,東京工科大学
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