クラウド利用の深化と安全保障への一考
近年、各企業におけるクラウドサービスの利用が急速に拡大しており、その流れはもはや止めようのないものとなっている。この度、国内の主要なデータベースベンダーであるアイティボ（ITB）が、自社のデータベース製品をアマゾン ウェブ サービス（AWS）上で利用可能にしたというニュースは、この時代の潮流を改めて強く印象づけるものである。これにより、これまでオンプレミス環境での運用が中心であった企業のデータベース管理に、新たな選択肢が生まれたと言えるだろう。
AWSのようなグローバルなクラウドプラットフォームを活用することで、企業はインフラストラクチャ管理の負担を軽減し、より迅速なサービス提供やコスト削減を実現できると期待される。これは、DX（デジタルトランスフォーメーション）を推進する上での重要な一歩であり、企業の競争力強化に資するものであることは疑いの余地がない。
しかしながら、この技術革新の光の部分だけに目を奪われるわけにはいかない。クラウドサービスの利用が深化するということは、それだけ重要で機密性の高い情報が外部の、それも多くは海外のプラットフォーム上に置かれる機会が増えるということである。特に、国の基幹インフラや企業の機密情報を扱うデータベースにおいては、その安全保障上の意味合いは極めて大きい。
AWSは世界的に見ても信頼性の高いサービスを提供しているが、それでもなお、サイバー攻撃のリスクや、場合によっては国家によるデータへのアクセスといった懸念を完全に払拭することは難しい。国内の技術ベンダーが提供するデータベースが、海外のインフラ上で運用されるということは、今まで国内に閉じていた情報管理のあり方が大きく変わることを意味する。
我々は、こうしたクラウド化の進展を歓迎する一方で、その裏腹にあるリスクにも目を向ける必要がある。単に技術的な利便性や経済合理性のみで判断するのではなく、国家の安全保障、国民の個人情報保護という観点から、どのようなガバナンス体制を構築すべきか、どのような法制度や技術的な対策が求められるのか、真剣に議論しなければならない時期に来ているのではないだろうか。
国内のITインフラの強靭化や、データ主権の確保といった視点も、今後の日本の技術戦略において、決して軽視できない重要な要素である。クラウド化の波に乗り遅れることなく、しかし同時に、国家としての品格と安全を守るための冷静な判断と、先を見据えた備えを怠ってはならない。技術の進化は、常に私たちに新たな問いを投げかけてくるのである。
オラクルデータベースがAWSで使えるようになったよ！～新しいお宝箱が開いた！～,Amazon
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