図書館の未来図、そして「知」へのアクセス権限の再定義
インターネットが生活の一部となり、瞬時に膨大な情報にアクセスできるようになった現代において、「図書館」という存在は、その役割を問い直されている。そんな中、IEEE Xploreという学術論文データベースへのアクセス制限が、我々に重要な示唆を与えている。
情報化社会の恩恵を享受する我々は、かつてないほど豊かで多様な「知」の海を泳いでいる。しかし、その海の深淵に分け入るための「船」となるのが、今回話題となっているような専門データベースである。学術界の最前線を行く研究者たちが発表する最新の知見、未来を切り拓くイノベーションの種は、こうしたデータベースに集積されている。
今回のIEEE Xploreへのアクセス制限は、まさにこの「知へのアクセス権限」という、現代社会の根幹に関わるテーマを浮き彫りにする。大学や研究機関に所属する者のみが、その扉を開くことができるという現実は、ある種の「知の格差」を生み出さないだろうか。もちろん、専門性の高いコンテンツの適切な利用や権利保護という側面は理解できる。しかし、我々が目指すべきは、情報へのアクセシビリティを最大限に高め、より多くの人々が「知」の恩恵を受けられる社会ではないだろうか。
図書館は、単なる蔵書を保管する場所ではない。それは、社会全体の知的好奇心を刺激し、学習意欲を掻き立てる公共のインフラであるべきだ。今回の件を機に、図書館の役割を改めて考え直す必要がある。
例えば、より多くの人々が最先端の学術情報に触れられるよう、大学図書館と公共図書館の連携を強化する道はないか。あるいは、アクセス制限のあるデータベースについて、一般市民向けの利用機会を設けるための新たなモデルを模索することはできないか。図書館が、従来の「貸し出し・閲覧」機能に加え、「知への架け橋」としての役割を強化していくことこそが、情報化社会における図書館の存在意義を高める鍵となるはずだ。
このIEEE Xploreへのアクセス制限は、単なる技術的な問題ではない。それは、我々がどのような社会を目指すのか、そして「知」という共有財産に、誰が、どのようにアクセスできるべきなのかという、根本的な問いを投げかけているのである。図書館は、この問いに対する答えを、社会全体と共に考え、形にしていくべき存在である。
【重要なお知らせ】IEEE Xploreをご利用のお客様へ ～ 7月12日（土）メンテナンス実施のご案内 ～,京都大学図書館機構
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