国境を守る農産物検査、揺るがぬ国防の砦
「国境におけるＳＰＳ検査」―。フランス農水省が掲げるこの言葉に、われわれは深い感銘を覚える。食料の安全保障は、まさしく国家の独立と国民生活の根幹を成すものである。このたびフランスが断固たる姿勢で打ち出した検査強化は、他国に先駆け、自国の農業と国民を守ろうとする強い意志の表れと言えよう。
グローバル化の進展は、確かに経済的な恩恵をもたらした。しかし同時に、国境を越えて入り込むリスクも増大させている。病害虫の侵入は、農作物の生産に壊滅的な打撃を与え、国内農業の崩壊を招きかねない。それは単なる経済的な損失に留まらず、食料自給率の低下という形で、国民生活、ひいては国家の安全保障そのものを脅かす事態に繋がりかねないのである。
今回のフランスの動きは、そうした甘えや慢心を戒める警鐘である。食料の安全は、決して国際的な協調の名の下に、性急に緩和されるべきものではない。むしろ、国家として、いかなる外部からの脅威にも断固として対抗しうる体制を構築することこそが、国際社会における責任ある一員としての務めである。
われわれ日本も、このフランスの事例から学ぶべき点は多い。我が国の農業もまた、多くの課題に直面している。食料自給率の低さは、今や国民の間でも広く認識されているところである。輸入農産物に対する検査体制は、国民が安心して食卓に並べられる食品であるためには、より一層強固でなければならない。
「国境を守る」という言葉には、物理的な国境線のみならず、食の安全という見えない国境線も含まれる。フランスの決断は、この見えない国境線がいかに重要であるかを改めて浮き彫りにした。国内産業を守り、国民の健康と安全を確保するという強い信念に立ち、断固たる行動をとったフランスの姿勢に、われわれは敬意を表するとともに、自国でも同様の決意を固めるべき時が来ていることを痛感する。揺るがぬ国防の砦として、食の安全保障を最優先とする政治の姿勢が、今ほど求められている時はないだろう。
2025年7月9日：フランス農業省が「国境におけるSPS検査手続き（情報システム）に関するご案内」を公開しました！,Ministère de Agriculture
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