「民泊」新時代、その光と影――地域経済再生の切り札となるか
ITB社の報道によると、今後エアビーアンドビーなどの民泊プラットフォームを通じて、富裕層をターゲットとした高級バケーションレンタルがさらに拡充される見込みだという。これは、コロナ禍で大きな打撃を受けた観光産業、特に地方経済の再生に向けた新たな一手となりうる可能性を秘めている。これまで以上に質の高い宿泊体験と地域ならではの魅力を組み合わせることで、国内はもとより海外からの高付加価値旅行者の誘致が期待できる。地域に眠る古民家や空き家を再生し、新たな雇用を生み出すことも視野に入れば、地方創生の切り札となり得るだろう。
しかし、この「高級民泊」の広がりに対して、楽観一辺倒で捉えるのは早計である。まず、地域住民との軋轢が懸念される。生活空間への過度な干渉や騒音、マナー違反などが横行すれば、地域コミュニティとの調和を乱しかねない。特に高級宿泊施設となれば、より一層プライベートを重視する宿泊客と、静穏な生活を望む住民との間でデリケートな問題が生じる可能性が高い。
また、景観や環境への影響も無視できない。建築規制や景観条例が緩い地域では、地域の景観を損なうような大規模な改修が行われるリスクもある。持続可能な観光の観点から、こうした「脱法行為」とも言えるような開発を野放しにするわけにはいかない。
さらに、税収の問題も浮上する。民泊の収益が適切に申告・課税されているのか、その透明性を確保する必要がある。高級路線となれば、その規模も大きくなるため、税務当局の適切な監督が不可欠となるだろう。
経済紙としては、こうした新たな潮流を歓迎する一方で、その負の側面にも目を配り、建設的な提言を行わなければならない。具体的には、地域住民との合意形成を促進する仕組みの構築、建築基準や環境保護に関する明確なガイドラインの策定、そして適切な税務管理体制の強化といった課題に取り組むべきである。
高級民泊が真に地域経済の活性化に貢献するためには、単に宿泊施設を増やすだけでなく、地域文化やコミュニティとの共生を図ることが不可欠だ。そのための行政のイニシアチブと、事業者、地域住民の三者間での丁寧な対話が求められている。この新たな波を、地域全体にとってより良い未来へと繋げるための知恵が、今、問われている。
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