異次元の緩和が招く REIT への熱狂、そして危うさ
日本の株式市場が、再び活況を呈している。7月9日、日本取引所グループが発表したETF・REIT市場の統計によれば、国内リートの取引高は前年同月比で大幅な増加を示し、市場全体に熱狂的なムードが漂っている。この背景には、異次元の金融緩和政策の継続と、それによる低金利環境が REIT 市場への資金流入を加速させていることが挙げられるだろう。
低金利下では、伝統的な預貯金や債券からのリターンは期待しにくくなる。そこで、投資家たちはより高い利回りを求めて、不動産投資信託である REIT へと目を向ける。REIT は、不動産から得られる賃料収入や売却益を投資家に分配するため、相対的に高い分配金利回りが期待できる。特に、日本の REIT 市場は、商業施設、オフィスビル、マンションなど、多様な不動産に分散投資できるポートフォリオを有しており、安定した収益源として魅力が増しているのだ。
しかし、この熱狂の陰には、冷静に分析すべき危うさも潜んでいる。過剰な流動性が REIT 市場に流入することで、不動産価格や REIT の基準価額が実態以上に押し上げられている可能性は否定できない。これは、いわゆる「バブル」の兆候と捉えることもできる。もし、金融政策の転換や経済情勢の悪化などにより、 REIT 市場から資金が急速に流出するような事態が発生すれば、市場の急激な下落を招き、投資家、ひいては日本経済全体に影響を与えるリスクも孕んでいる。
我々経済紙としては、この REIT 市場の活況を単なるポジティブなニュースとして捉えるのではなく、その根底にある構造的な要因と、潜在的なリスクの両面から多角的に分析する必要がある。政府や中央銀行には、金融緩和政策の出口戦略について、市場との丁寧な対話を通じて、予期せぬ混乱を招かないような慎重な運用が求められる。また、投資家一人ひとりにも、 REIT のリターンだけでなく、そのリスクもしっかりと理解した上で、自己責任に基づいた健全な投資判断を下すことが肝要である。
「異次元の緩和」がもたらす REIT への熱狂は、現時点では市場活性化の好機と映るかもしれない。しかし、その熱狂が、将来的な痛みを伴う調整への序章とならないよう、我々は常に市場の動向を注視し、冷静な分析と建設的な提言を続けていかなければならない。
日本取引所グループ、2025年7月9日に「株式・ETF・REIT等 銘柄別月間相場表」を更新！投資家にとって見逃せない最新情報をお届け,日本取引所グループ
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