松山市の技術職（土木）正職員採用試験、若年層の応募増にみる地域活力の兆し
松山市が令和7年度の技術職（土木）正職員採用試験において、若年層からの応募が増加傾向にあるというニュースは、地域経済の活性化を願う者として歓迎すべき兆候である。長らく続いた若者の都市部への一極集中という潮流に、かすかながらも変化の兆しが見え隠れする。この動きを単なる一時的な現象で終わらせず、持続的な地域活力の源泉へと繋げていくためには、行政の戦略的な取り組みと、それを受け止める地域社会全体の変革が不可欠となる。
今回の応募者増の背景には、様々な要因が複合的に作用していると考えられる。一つには、都市部における競争の激化や、地方での暮らしへの関心の高まりが挙げられるだろう。しかし、それ以上に注目すべきは、松山市が技術職という専門職を通じて、若者たちが「まちづくり」という具体的な目標に向かって貢献できる場を提供している点だ。土木技術職は、道路、橋梁、上下水道といったインフラ整備はもちろんのこと、防災対策、景観形成、さらには再生可能エネルギー関連のプロジェクトなど、地域が抱える課題解決に直結する最前線の仕事である。若者たちがそうした仕事に意義を見出し、自らのスキルやアイデアを活かせる環境に魅力を感じているのであれば、それは大変喜ばしいことだ。
経済紙としては、この動きを単なる採用試験の成功事例として捉えるだけでなく、より広い視野で分析する必要がある。若者の地方志向の高まりは、デジタル技術の進展による働き方の多様化や、ワークライフバランスを重視する価値観の変化とも連動している。松山市が、こうした時代の変化を捉え、技術職という専門職に魅力的なキャリアパスを提供できているとすれば、それは他の地方自治体にとっても参考になる示唆に富む。
もちろん、採用試験への応募者の増加が、直ちに地域経済の持続的な発展を約束するものではない。採用された優秀な人材が、その能力を最大限に発揮できるような組織風土の醸成、継続的な研修機会の提供、そして何よりも、彼らが描く「まちづくり」のビジョンを実現するための予算措置や権限委譲といった、より具体的な支援が求められる。また、地域住民の理解と協力も不可欠であり、技術職の活躍が市民生活の質の向上に繋がることを実感できるような対話の機会を設けることも重要だろう。
さらに言えば、技術職（土木）に限らず、他の分野においても同様の魅力を発信していくことが期待される。教育、医療、福祉、ITといった分野で、地域が抱える課題と、それを解決するために必要とされる専門職の役割を、若者たちが理解できるような形で伝え続ける必要がある。
今回の松山市の事例は、地方創生の実現に向けた一つの光明と言える。しかし、この光をさらに大きく、そして温かいものにするためには、行政、地域社会、そして若者自身が、共に手を携え、未来への具体的な一歩を踏み出していく覚悟が求められている。松山市がこの勢いを維持し、将来にわたって地域に活気をもたらす人材育成のモデルケースとなることを、経済紙として期待したい。
松山市 令和7年度 技術職（土木）正規職員採用試験 合格者発表！ ～5月申込分の結果～,松山市
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