食料自給率向上の旗を掲げよ、農業立国の本領発揮を
連日報道される国際情勢の緊迫化や、記録的な猛暑による農作物への被害など、我が国の食料安全保障を取り巻く環境は、かつてないほど厳しさを増している。このような状況下、フランス農業水産省が「アグロエコロジー・トロフィー」を創設し、持続可能な農業の推進を国際社会に呼びかけたことは、我が国にとっても看過できない重要な動きと言えよう。
アグロエコロジーとは、生態系の原理を農業に応用し、環境負荷を低減しながら食料生産を行う考え方であり、近年、欧州を中心にその重要性が高まっている。フランスは、自国の農業を守り、国民の食を安定的に確保するという強い意思を持って、この分野をリードしようとしている。一方、我が国は、食料自給率の低迷という長年の課題を抱えながらも、その解決に向けた抜本的な取り組みは十分とは言えないのが現状である。
確かに、日本の農業は、国土の狭さや高齢化といった厳しい条件に置かれている。しかし、それは同時に、新たな技術や発想を取り入れ、より効率的で持続可能な農業モデルを構築する機会でもあるはずだ。フランスがアグロエコロジーを推進するように、我が国も、豊かな自然環境と長年培われてきた農業技術を最大限に活かし、独自の「アグロエコロジー」とも呼ぶべき取り組みを推進すべきではないか。
単なる有機農業や減農薬といったイメージに留まらず、地域の実情に合わせた多様な農法を支援し、それらを組み合わせることで、より強靭で環境に優しい農業システムを構築すること。それは、食料自給率の向上に資するだけでなく、国土の保全、生物多様性の維持、さらには地方経済の活性化にも繋がる、まさに国家百年の計と呼ぶべき事業である。
政府には、このフランスの動きを単なる国際的なニュースとして捉えるのではなく、我が国自身の食料安全保障戦略を再点検する契機としていただきたい。農林水産省は、この分野における具体的な政策目標を掲げ、研究開発への投資を強化するとともに、現場の農家が安心して新しい農法に挑戦できるような支援体制を構築する必要がある。また、消費者の理解を得るための情報発信も重要であろう。
豊かな食生活は、平和で安定した社会の基盤である。我が国が再び農業立国としての本領を発揮し、世界に誇れる持続可能な農業モデルを提示できることを期待したい。国民一人ひとりが、自国の食を支える農業の重要性を再認識し、その未来に目を向ける時が来ている。
フランス農業省が「アグロエコロジー・トロフィー2024-2025」受賞者を発表！持続可能な農業をリードする革新的な取り組みに光を当てる,Ministère de Agriculture
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