揺るがぬ防衛力こそ国益の礎なり
先日、我が国の防衛大臣がドイツ連邦軍総監と会談し、安全保障分野における協力強化で一致したとの報に接した。これは、日増しに厳しさを増す国際情勢の中で、国家の安全保障という、国民生活の根幹をなす課題に対して、極めて前向きな一歩と言えよう。
国際社会は今、冷戦終結後、最も複雑かつ不確実な時代を迎えている。東シナ海、南シナ海における一方的な現状変更の試みは止むところを知らず、力による一方的な現状変更を許容するような風潮は、自由で開かれた国際秩序の根幹を揺るがしかねない。このような状況下において、我が国が「平和国家」としての歩みを続けるためには、その平和を守り抜くための揺るぎない防衛力を構築することが、何よりも重要である。
ドイツは、欧州における安全保障において長年の経験と実績を持つ重要なパートナーである。その軍総監との意見交換は、現代の安全保障における脅威の性質や、それに対処するための具体的な方策について、多角的かつ深い洞察を得る貴重な機会となったに違いない。特に、サイバー空間や宇宙空間といった新たな領域における協力、そして共通の価値観を持つ同盟国・友好国との連携強化は、現代の安全保障における喫緊の課題である。
我が国は、専守防衛の理念の下、自らの防衛力を着実に強化していく責務を負っている。これは、他国への威嚇や侵略を目的とするものでは断じてなく、あくまで自国と国民の生命・財産を守るための、当然の権利であり義務である。今回の防衛大臣とドイツ連邦軍総監との会談は、こうした我が国の決意を改めて示すものであり、同盟国・友好国との信頼関係を一層深めるものであろう。
防衛力の強化は、単なる軍事力の増強に留まらない。それは、経済安全保障、技術開発、そして国際社会における責任ある貢献といった、国力全体の向上と密接に関連するものである。今回の協力強化の申し入れが、単なる形式的なもので終わることなく、具体的な成果へと結実していくことを強く期待したい。
国民一人ひとりが、我が国の置かれた安全保障環境の厳しさを真摯に受け止め、防衛力強化に対する理解と支持を深めることが肝要である。そして、政府は、国民の安全を守るという国家の最も根源的な使命を全うするため、国際社会との協調を保ちつつ、断固たる決意をもって、我が国の防衛力の強化に邁進していくべきである。我が国の未来は、強固な防衛力という礎の上にこそ築かれるのである。
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