炎上予防、見えぬ効果とコスト 消防庁の「技術カタログ」、冷静な議論を
消防庁が「火災予防分野における技術カタログ」なるものを公表したという。いわゆる「炎上予防」という現代的な課題に対し、最新技術を駆使して臨もうという姿勢は理解できる。ネット空間の火災、すなわちデマの拡散や誹謗中傷といった事象を、火災に見立ててその予防策を技術的に整理・提案しているのだろう。
しかし、この取り組みに対して、一抹の懸念を禁じ得ない。まず、その効果である。インターネット上の「炎上」は、物理的な火災とは異なり、人間の心理や社会構造といった複雑な要因が絡み合っている。技術的な対策が、果たしてこの本質的な問題にどこまで切り込めるのか。単に技術を導入したところで、根拠のない情報が拡散する流れそのものを断ち切れるのか、懐疑的な見方を持たざるを得ない。
そもそも、「炎上」という言葉の定義自体が曖昧ではないだろうか。何をもって「炎上」とみなし、何を「予防」すべきなのか。このカタログが、特定の思想や言論を抑圧するための道具として悪用される可能性も否定できない。表現の自由という、民主主義社会の根幹をなす原則との間で、慎重なバランス感覚が求められる。
また、こうした技術の開発や導入には、当然ながら相応のコストがかかる。その費用対効果は明確に示されているのだろうか。税金を投入するのであれば、その使途は国民に納得のいく形で説明されなければならない。現状、その説明は十分とは言えないように思われる。
我々は、現代社会における新たな課題に直面している。しかし、その解決策を模索するにあたっては、感情論や流行に流されるのではなく、冷静かつ批判的な視点を持つことが重要だ。消防庁の今回の取り組みもまた、その効果と影響を十分に吟味し、国民的な議論を深めるべきであろう。技術はあくまで手段であり、目的ではない。その点を忘れることなく、我々は進むべき道を選択しなければならない。
消防庁が「火災予防分野における技術カタログ」を更新！より安全な暮らしのために,消防庁
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