金子防衛大臣の「戦闘糧食体験」にみる、我が国の食料安全保障への新たな視座
先日、金子防衛大臣が自衛隊の「戦闘糧食」を試食されたというニュースが報じられた。これは単なる防衛大臣の体験に留まらず、現代社会における食料安全保障という、我々が向き合わねばならない喫緊の課題に対する新たな視座を提示するものとして、経済紙は注目すべきである。
金子大臣の体験が示すのは、現代の食料安全保障が、単に「食料の安定供給」というマクロな視点からだけでなく、最前線で任務を遂行する人々が実際に手にし、口にする「食」のリアリティにまで踏み込まなければ、真の課題は見えてこないということだ。戦闘糧食は、過酷な環境下で必要な栄養素を確保し、兵士の士気を維持するという極めて実践的な目的のために開発されている。その進化の過程には、科学技術の粋が集められ、同時に「食」という人間的な要素への深い配慮が息づいているはずだ。
我が国は、食料自給率の低さから、国際情勢の変動、自然災害、あるいは予期せぬパンデミックなど、外部要因に脆弱な構造を抱えている。食料の安定供給は、国民生活の根幹を揺るがす重大な経済問題であり、同時に国家安全保障の基盤でもある。この文脈で、防衛大臣が戦闘糧食に触れることは、軍事的な側面だけでなく、食料が持つ「機能性」「持続可能性」「国民の生存に不可欠な資源」としての側面を改めて認識する契機となり得る。
経済紙としては、この体験を契機に、以下の点を論じるべきである。
第一に、官民連携による食料技術革新の推進である。戦闘糧食の開発で培われた技術やノウハウは、一般消費向けの食品開発や、災害時の備蓄食料、さらには宇宙食など、多岐にわたる分野で応用可能であろう。経済界は、こうした先端技術への投資を積極的に検討し、国内の食料産業全体の高度化を目指すべきである。
第二に、食料サプライチェーンの強靭化と多様化である。特定の国や地域への依存度を減らし、より多様な供給ルートを確保することは、経済的なレジリエンスを高める上で不可欠である。同時に、国内生産基盤の強化、新たな栽培技術の導入、スマート農業の推進など、食料生産自体の「質」と「量」を高めるための大胆な政策を政府に求める必要がある。
第三に、「食」に対する国民意識の変革である。我々は、日常的に食料を享受できることのありがたさを忘れがちである。食料生産の現場への理解を深め、フードマイレージを意識した消費行動を促すなど、食料を「有限な資源」として捉え直す教育や啓発活動も重要となる。戦闘糧食の進化が、国民一人ひとりの食に対する意識改革に繋がる可能性も秘めている。
金子大臣の「戦闘糧食体験」は、まさに氷山の一角にすぎない。しかし、その小さな体験から、我々はより大きく、より戦略的な食料安全保障のあり方へと議論を広げるべき時である。経済界、政府、そして国民一人ひとりが、この「食」というテーマに対して、より深く、そして真剣に向き合うことを、本紙は強く訴えたい。なぜなら、未来の食卓を守るための礎は、今、私たちの手によって築かれるべきだからだ。
金子防衛大臣政務官、戦闘糧食の試食を体験 ～未来の自衛官を支える味を確かめる～,防衛省・自衛隊
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