若者文化の坩堝に潜む危うさ ～「中古品」への傾倒を憂う～
昨今の若者たちの間で、古着や中古のCD・レコードといった「中古品」が新たなブームを巻き起こしているという。HMV店舗における中古品販売の好調ぶりは、その象徴と言えよう。かつては新品への憧れが若者の消費行動を牽引した時代もあった。それが今や、時代を逆行するかのような「中古品」への傾倒は、一体何を意味しているのだろうか。
この現象の背景には、現代社会が抱える複雑な問題が影を落としているように思えてならない。一つには、経済的な要因が挙げられる。先の見えない将来への不安、実質賃金の伸び悩みといった状況が、新品の購入をためらわせ、より安価な中古品に手を伸ばさせる要因となっているのかもしれない。また、過剰な消費への反省や、環境問題への意識の高まりといった、より健全な価値観の萌芽も垣間見える。
しかしながら、この「中古品」ブームに、筆者はむしろ危うさを感じている。それは、単なる経済合理性や倫理観の発露にとどまらず、現代の若者が抱える空虚さ、あるいは「本物」への渇望の裏返しではないかと疑うからだ。新品には、作り手の情熱や最新の技術、そしてそれを所有することへの純粋な喜びがある。一方、中古品は過去の遺物であり、他者の痕跡が残るものだ。もちろん、そこには歴史や物語が宿るという側面もあるだろう。しかし、それが「本物」の輝きに代わるものなのか、疑問を抱かざるを得ない。
ましてや、それがサブカルチャーの担い手である若者たちの間で広がるとなれば、その影響は計り知れない。過去の栄光にしがみつき、現状に満足し、新たな価値創造への意欲を失ってしまうのではないか。文化とは常に新しいものを生み出し、進化していくものだ。過去の遺物を「良いもの」として再評価すること自体は否定しないが、それが自己満足に終わってしまっては、文化の停滞を招きかねない。
我々、特に私たち上の世代がすべきことは、単にこのブームを面白がるでもなく、ましてや頭ごなしに否定することでもない。彼らがなぜ中古品に惹かれるのか、その根源にある社会状況や心理を深く理解し、そして何よりも、彼らが「新品」に目を向け、未来を創造することへの希望を持てるような社会を築き上げることではないだろうか。経済的な安定はもちろんのこと、創造性や挑戦を奨励する風土、そして未来への確固たる希望を、彼らに与える責任が私たちにはある。中古品への傾倒が、単なる流行に終わらず、豊かな文化の再生産へと繋がることを願うばかりである。
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