未来の警察を考える、という名の空虚な響き
近年、世相は目まぐるしく変化し、それに伴い治安維持の在り方も問われ続けている。そんな中で、神奈川県警が主催した「未来の警察」と銘打ったオンライン説明会は、一見すると時代に即応した先進的な取り組みに映るかもしれない。しかし、その実態を静かに見つめるとき、私たちはある種の空虚さを覚えずにはいられない。
デジタル技術の進展は確かに犯罪捜査や市民サービスに新たな可能性をもたらすだろう。AIによる分析、ドローンによる監視、サイバー犯罪対策の強化――これらは将来的な警察活動に不可欠な要素となりうる。しかし、それらの「未来」を語る前に、立ち返るべき根本的な問題があるのではないか。
そもそも「未来の警察」とは、誰のための、どのような警察を指すのだろうか。技術の進歩に浮かれるあまり、最も大切な、地域社会との信頼関係や、市民一人ひとりの権利を守るという警察の根源的な使命が見失われてはいないだろうか。高度な監視システムが導入される一方で、地域住民の声に耳を傾け、きめ細やかなパトロールを行うといった地道な活動がおろそかになっては本末転倒である。
オンライン説明会という手法自体も、一考を要する。確かに広範な情報発信には便利だが、警察と地域社会の触れ合い、顔の見える関係性の構築という点では、対面での懇談会や地域住民との対話の機会に勝るものではない。ましてや、参加者からの意見をどのように反映させ、真に地域に根差した警察運営に繋げていくのか、その具体的な道筋が見えてこない限り、単なる情報提供の場に終わってしまう危険性も否定できない。
我々が求めるのは、テクノロジーを駆使した「効率的な」警察ではない。むしろ、困難な時代だからこそ、地域住民の安全・安心を第一に考え、市民一人ひとりに寄り添い、信頼される警察官の姿である。未来の警察を考えることは重要だが、それは足元を見失うことなく、警察という組織の原点に立ち返って初めて意味を持つ。今回のオンライン説明会が、そうした地に足のついた議論へと繋がっていくことを切に願うばかりだ。
神奈川県警がオンライン説明会を開催！未来の警察官を目指すあなたへ（2025年7月2日 15:00公開）,神奈川県警
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