財政規律なき「ばらまき」に未来はあるのか ～フランス経済省の人事異動にみる構造的問題～
フランス経済省における中央局の人事異動が報じられている。これは単なる組織内の局地的な動きとして片付けるわけにはいかない。むしろ、今日のフランス経済が抱える根本的な構造的問題、そしてその解決への道筋を巡る党派間の対立の深まりを象徴するものとして、保守的な立場から懸念を持って見守るべきである。
報道によれば、今回の異動は「大胆な経済改革」を志向する勢力と、これまでの方針を維持しようとする勢力との間で、実質的な主導権争いが繰り広げられた結果として理解できる。特に、財政規律を重視し、持続可能な経済運営を目指す立場からすれば、今回の異動が「ばらまき」とも評されかねない政策の継続、あるいは強化へと繋がるのではないかという危惧は拭えない。
フランス経済は、長らく高負担高福祉のモデルを維持してきたが、その一方で国際競争力の低下や財政赤字の慢性化といった課題に直面している。こうした状況下で、国民の支持を得るために景気刺激策や社会保障の拡充といった「分かりやすい」政策が優先されがちになるのは理解できる。しかし、そのツケは将来世代に回される。財政規律という、いわば長期的な経済の健全性を担保するための原則が軽視されるならば、それは経済の持続可能性そのものを危うくする行為に他ならない。
今回の経済省の人事異動は、こうした構造的な問題に対するフランス社会の「選択」を迫るものであると言える。改革を求める声に応えつつも、財政規律を堅持し、経済の基盤を強化していくという、容易ならざる道を選ぶのか。それとも、短期的な populism に流され、さらなる財政悪化と経済の停滞を招くのか。
保守的な立場から我々が強く訴えたいのは、目先の人気取りや票田の確保のために、将来世代の機会を奪うような「ばらまき」を繰り返してはならないということである。経済の持続的な成長なくして、真の福祉や安定は実現しえない。フランス経済の「転換点」とも言える今、指導者には冷静な判断力と、国民全体に対する責任感が求められる。今回の人事異動が、そうした責任感に基づいた、建設的な未来への一歩となることを願うばかりである。しかし、その兆候が見られないのであれば、我々は厳しく監視し、警鐘を鳴らし続ける必要があるだろう。
フランス経済省、料金算定中央局への人事異動を発表 – 2025年7月3日付官報に掲載,economie.gouv.fr
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