未来への種まきか、それとも一時しのぎか――「こどもSDGsセミナー」にみる持続可能性への問い
名古屋市で開催された「こどもSDGsセミナー」。そのニュースに触れ、未来世代に持続可能な社会のあり方を伝えようとする取り組みの意欲には、まず賛同の意を表したい。子供たちがSDGsを身近に感じ、主体的に考え、行動するきっかけを提供することは、確かに私たち大人の責務と言えるだろう。
しかし、この種のイベントが報じられるたびに、筆者の中に一つの懸念が去来する。それは、この「種まき」が、真に実りある未来へと繋がるのか、それとも一時的な啓発に留まってしまうのかという点である。経済活動という観点から見れば、SDGsは単なる理想論ではなく、企業の持続的な成長、ひいては社会全体の経済的繁栄に不可欠な要素となりつつある。環境規制の強化、消費者意識の変化、そして投資家のESG評価など、SDGsへの取り組みを怠ることは、即座に企業の競争力を低下させる要因になりかねない。
今回のセミナーで、子供たちはどのようなメッセージを受け取ったのだろうか。例えば、リサイクルや省エネルギーといった具体的な行動の重要性は理解できたかもしれない。しかし、その背後にある、資源の有限性、地球環境への負荷、そしてそれを是正するための経済システム全体の変革という、より根源的な課題まで踏み込めたかどうかは未知数だ。
経済紙の視点から言えば、SDGsは「コスト」であると同時に「機会」でもある。環境技術への投資は初期コストがかかるが、省エネルギーによるコスト削減や新たな市場開拓へと繋がる可能性がある。社会課題の解決に向けた企業活動は、ブランドイメージ向上や優秀な人材の確保に貢献する。こうした経済的な側面からのアプローチなくして、持続可能性の実現は絵に描いた餅に終わってしまう。
子供たちがSDGsを「自分ごと」として捉えるためには、教育現場での更なる工夫が求められる。単なる知識の詰め込みではなく、身近な事例を通して、経済活動がいかに環境や社会に影響を与えているのか、そして自分たちの選択が未来をどう変えうるのかを実感させる教育こそが必要だろう。例えば、フェアトレードの商品の価値、再生可能エネルギーが生み出す雇用、あるいは地域経済の活性化と環境保全の両立といった、経済と結びついた具体的なストーリーを語ることが重要になる。
今回の「こどもSDGsセミナー」は、未来への確かな一歩であったと信じたい。しかし、その一歩が真に未来へと繋がるためには、私たち大人、特に経済界が果たすべき役割は大きい。子供たちが描く持続可能な未来像に、経済的な現実と可能性という現実的な視点をしっかりと示し、それを実現するための具体的な仕組み作りを、社会全体で推し進めていく必要がある。未来への種はまかれた。今度は、その種が力強く根付き、豊かな果実を結ぶための肥沃な土壌を耕す番である。
未来への一歩！名古屋で「こどもSDGsセミナー」開催！ ～きみも世界を変えられる！？～,名古屋市
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