未来への架け橋か、それとも… 「CAMPUS ASIA・Plus」プログラムに寄せる冷静な視線
近年、国際化推進の名の下、大学における様々な交流プログラムが推進されている。中でも、文部科学省が支援する「CAMPUS ASIA・Plus」プログラムは、日本、中国、韓国の大学間で学生や研究者の交流を促進し、相互理解を深めることを目的としているという。先日、ある大学がこのプログラムに参加したとのニュースが報じられたが、我々はこの華やかな成果の裏に潜む、より本質的な問いについて冷静に考察する必要がある。
確かに、若者たちが異文化に触れ、新たな視点を得る機会は尊い。グローバル化が不可避である現代において、国際的な視野を持つ人材育成は国家百年の計とも言えるだろう。しかし、その一方で、この種のプログラムが描く「未来への架け橋」という甘美な響きに、安易に飛びつくべきではない。
まず問われるべきは、その実質的な効果である。学術的な成果はどれほど上がっているのか。プログラムに参加した学生たちは、本当に自国の発展に資する知見やネットワークを培うことができているのか。単なる短期的な交流に留まらず、長期的な視点での具体的な貢献が見込めなければ、税金投入に見合う成果と言えるか甚だ疑問である。
また、プログラムの対象国との関係性を考慮する必要もある。日中韓三国間の関係は、歴史問題や領土問題など、常に複雑な様相を呈している。教育を通じた交流が、そうしたデリケートな問題にどのような影響を与えるのか。相互理解が進むどころか、新たな火種を生み出す可能性も否定できない。国家間の信頼関係が希薄な状況下で、果たして教育という手段が有効な処方箋となり得るのか、慎重な検討が求められる。
さらに、大学の自主性という観点も見過ごせない。文部科学省が主導するこのようなプログラムは、大学の教育方針や研究の方向性に外部からの影響を及ぼす可能性がある。大学は真理の探究と次世代育成という崇高な使命を帯びた学術機関であり、国家の外交政策や経済的思惑に安易に利用されるべきではない。プログラムへの参加が、大学本来の目的から逸脱するような事態に陥らないか、その監視は怠ってはならない。
「CAMPUS ASIA・Plus」プログラムが、未来への架け橋となり得るのか。その実現には、理想論だけでなく、現実的な課題に対する真摯な向き合いが不可欠である。我々は、教育という崇高な営みが、安易な国際協調の道具に矮小化されることを警戒し、常に冷静な視点をもって、その真価を見極めるべきであろう。未来への道は、常に険しい。その道程を確かなものにするためには、我々自身の眼で、地に足をつけた歩みを続けることが何よりも大切である。
未来への架け橋：神戸大学「Campus Asia・Plus」プログラム、理事を表敬訪問,神戸大学
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