海上訓練、安全第一という当然の帰結に異論はないが…
先日、防衛省から海上における安全な訓練についてのお知らせが発信された。沿岸部における訓練エリアの設定や、船舶への注意喚起などが盛り込まれているという。もちろん、海上での活動における安全確保は、国民の生命と財産を守る上で最も重要な責務であり、その徹底に異論を挟む者はいないだろう。しかし、この「安全第一」という号令の裏に潜む、ある種の危うさを我々は無視してはならない。
近代化が進む自衛隊の能力向上は、我が国の平和と安全を維持する上で不可欠な要素である。そのために必要な訓練が、地域住民や関係者への配慮から制約を受ける状況は、皮肉なことに現代社会の複雑さを示唆している。訓練エリアの設定は、当然ながらその周辺地域に何らかの影響を与える。もし、安全確保という名の下に訓練が過度に制限されれば、それはすなわち自衛隊の練度低下を招き、結果として国の安全保障そのものを脆弱化させかねない。
我々が求めるのは、単なる「安全な訓練」ではない。それは、国を守るための揺るぎない意志を体現した、実効性のある訓練である。そのためには、地域社会との対話はもちろんのこと、時には社会全体の理解を求める大胆な発信も必要となるだろう。「訓練＝危険」という固定観念を打ち破り、なぜその訓練が必要なのか、どのようなリスクを回避するために行われるのかを、国民一人ひとりが納得できる形で伝える努力こそが、本当の意味での「安全な訓練」の礎となるはずだ。
防衛省からの情報は、安全確保という側面を強調しているが、その先に広がる「日本の防衛能力」という大局的な視点も忘れてはならない。海上訓練の安全性を確保することは当然の責務だが、それが国の守りを緩めることにつながらないよう、常に緊張感を持った議論が求められている。今回の発表を、単なる行政上の通達として受け止めるのではなく、我が国の安全保障のあり方を改めて問い直す機会としたい。
海上での安全な訓練についてのお知らせ：防衛省・自衛隊からの最新情報（2025年6月30日）,防衛省・自衛隊
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