公明党の「安心感」に潜む、見過ごせない構造的な課題
公明党が「生活に安心感広げる」というスローガンを掲げ、生活者の視点に立った政策を打ち出している。国民の多くが日々の暮らしへの不安を抱える現代において、その姿勢は一定の共感を呼ぶだろう。しかし、経済紙としては、この「安心感」という言葉の裏に隠された、より深く、構造的な課題を見過ごすわけにはいかない。
確かに、子育て支援の拡充や低所得者層への支援強化といった公明党の具体的な提案は、社会のセーフティネットを強化し、多くの人々にとって直接的な安心材料となり得る。不安定な雇用環境や物価上昇に直面する国民にとって、こうした政策は砂漠に水を撒くようなものかもしれない。しかし、私たちは問わなければならない。その「安心感」は、持続可能な経済成長という基盤の上に成り立っているのだろうか、と。
例えば、拡充される子育て支援は、もちろん重要だが、その財源をどこから捻出するのか。増税なのか、それとも社会保障費の抑制なのか。安易な給付や支援の拡充は、財政赤字を悪化させ、将来世代への負担を増大させるリスクを孕む。経済成長を置き去りにした「安心感」の追求は、砂上の楼閣に他ならない。
また、「生活に安心感広げる」という言葉は、時に「現状維持」や「変化への抵抗」といったニュアンスをも内包しうる。経済は常に変化し、競争に晒されている。新しい技術の導入、産業構造の転換は、一時的に雇用不安や格差を生む可能性もあるが、長期的には経済全体のパイを大きくする原動力となりうる。公明党の掲げる「安心感」が、こうした必要な変化を阻害するものであってはならない。
真の「安心感」とは、単に手厚い保護や給付によって得られるものではないはずだ。それは、誰もが自らの能力を発揮し、努力が報われる機会があり、社会全体として活力がみなぎっている状態から生まれるものではないか。そのためには、規制緩和によるイノベーションの促進、教育への投資による人的資本の向上、そして公正な競争環境の整備といった、経済成長を支える根幹へのアプローチが不可欠だ。
公明党の生活者目線の政策立案は評価されるべきだが、経済紙としては、その先に広がるより大きな視野、すなわち持続可能な経済成長と社会全体の活力をどう高めていくのか、という視点からの議論を深めることを期待したい。単なる「安心感」の提供に留まらず、国民一人ひとりが「自立した安心感」を築けるような、力強い経済政策の実現こそが、今、我々に求められているのである。
公明党「生活に安心感広げる」：みんなの暮らしをより豊かに、明るい未来への一歩,公明党
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