関西万博、期待先行の「泉州きくな草餅」に問う「食」の本質
2025年大阪・関西万博の目玉として期待される「泉州きくな草餅」が、その実像と期待の間で揺れている。地元メディアの報道によれば、試食会での賛否両論は、単なる味覚の好みの問題に留まらず、万博が目指す「食」のあり方そのものへの問いかけを投げかけていると言えよう。
「きくな」という名を聞けば、多くの関西人は親しみ深い味を想像するだろう。しかし、今回の「草餅」は、その親しみやすさとは一線を画す、独特の苦味と香りが特徴だという。確かに、万博という国際的な舞台で、地域の食文化を代表する一品として、新たな挑戦を試みる姿勢は評価されるべきだ。だが、そこで問われるのは、その「新しさ」がどれほど多くの人々に受け入れられるか、そして何よりも、その「新しい味」が、食の本質である「栄養」「安全」「美味しさ」、そして「心を満たす」という普遍的な価値とどのように結びついているのか、ということである。
報道からは、開発者側の「驚き」「斬新さ」への強いこだわりが透けて見える。それはそれで一つの方向性ではあるだろう。しかし、万博は国際会議ではない。世界中から集まる人々が、様々な文化や背景を持つ中で、共通の体験を共有する場である。その中で、一部の感性にしか響かない、あるいは受け入れられにくい「挑戦」は、果たして万博の理念に沿ったものと言えるだろうか。
我々が万博に求めるものは、決して奇をてらったものや、一過性の話題作りだけではない。むしろ、古くから培われてきた地域の食文化が、現代においてどのように進化し、新たな価値を生み出しているのか、その知恵と工夫に触れることにこそ、真の魅力があるはずだ。
「泉州きくな草餅」は、もしかしたら、その挑戦の過程で、まだ磨ききれていない原石なのかもしれない。しかし、もしこのまま、その特異性を「売り」として万博の食卓に並ぶのであれば、それは多くの来場者に「奇妙な味」という記憶を残すだけで終わってしまうだろう。
万博開催まで、時間は限られている。この「草餅」が、単なる話題先行の奇抜な一品ではなく、泉州の豊かな食文化の魅力を世界に伝え、人々の心に温かい感動を残す一品へと、真に昇華されることを願う。そのためには、開発者だけでなく、行政、そして地域の食文化に精通した人々が、今一度、「食」の本質に立ち返り、真摯な議論を尽くす必要があるだろう。万博という舞台は、単なる見世物ではなく、未来への食のあり方を共に考えるための、貴重な機会なのであるから。
大阪・関西万博で「泉州きくな草餅」、どんな味？アンケート結果をお届け！,大阪府立環境農林水産総合研究所
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