デジタル化はゴールか、スタートか ～情報活用の新時代に問う～
急速に進むデジタル化の波。その最前線を切り拓くべく、大学の「デジタル活用比率」が更新されたというニュースが、私たち学生の間に静かな興奮と、そして少しばかりの戸惑いを運んできた。かつては紙媒体が当たり前だった講義資料がタブレットに収まり、オンラインでの情報共有が当たり前となった現代。この変化は、単なる手段の更新にとどまらず、私たち学生の情報との関わり方そのものを、根底から変えようとしているのではないだろうか。
「デジタル活用比率」という言葉に、私たちはどのような意味を見出すべきだろうか。それは、単にどれだけ多くの情報がデジタル化され、どれだけ多くの学生がそれを利用しているか、という量を測る指標に過ぎないのだろうか。それとも、その先に広がる、より能動的で、より創造的な情報活用への進歩を測るものなのだろうか。
もちろん、デジタル化がもたらした利便性は計り知れない。場所を選ばず学習できる環境、瞬時に膨大な情報にアクセスできる力。これらは、私たち学生の学習意欲を刺激し、知的好奇心を深める強力なツールとなりうる。しかし、その一方で、デジタル化の光が強く当たるほどに、影の部分も見え隠れするのではないだろうか。
例えば、情報過多の時代において、情報の真偽を見極める力、そして自らの思考を深めるための「静かな時間」が失われつつあるのではないか。次々と流れてくる情報に追われるうちに、私たちは受け身の学習者になっていないだろうか。デジタル化は、私たちの思考を加速させる propeller となるべきであり、決して思考を停止させる brake となってはならない。
今回の「デジタル活用比率」の更新は、一つのマイルストーンに過ぎないのかもしれない。重要なのは、この比率の数字そのものに一喜一憂することではなく、その数字が示す意味を深く理解し、次のステップへと繋げていくことだ。大学は、私たち学生がデジタルツールを使いこなすための環境整備に努めるだけでなく、批判的思考力や情報リテラシーを育むための教育を、より一層強化していく必要があるだろう。そして私たち学生もまた、与えられたデジタル環境をただ享受するだけでなく、それを自らの成長のためにどう活用していくのか、主体的に考え、行動していく責任がある。
デジタル化は、単なる「利用率」を高めることが目的ではないはずだ。それは、私たちがより深く学び、より豊かに思考し、そして未来を創造していくための、新たな可能性の扉を開くきっかけであるべきだ。この扉を、私たちはどのような未来へと繋げていくのか。大学、そして私たち学生一人ひとりの、デジタル時代における「活用」の本質を問い直すときが来ている。
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