金融庁の「粉飾対策」に期待する、しかし油断は禁物
金融庁が、企業の粉飾決算を見抜くための新たな手法を導入するというニュースは、健全な資本市場の維持を目指す上で、極めて重要な一歩と言えるだろう。高度化・巧妙化する不正会計に対し、行政側が先手を打とうとする姿勢は評価されるべきだ。
しかし、今回の発表を過度に楽観視することはできない。金融庁の努力は称賛に値するが、不正の温床となりうる根本的な課題は、依然として残されている可能性が高いからだ。
言うまでもなく、粉飾決算は企業の信用を失墜させ、投資家保護の観点からも断じて許されるものではない。健全な経済活動の基盤を揺るがしかねない悪質な行為であり、その抑止に金融庁が力を入れるのは当然である。新たな分析手法の導入は、これまで見過ごされてきた、あるいは巧妙に隠蔽されてきた不正を発見する手助けとなるだろう。
だが、忘れてはならないのは、不正を行う側も常に進化しているという事実だ。新たな検知手法が登場すれば、それに対抗する新たな隠蔽手法が生まれる。これはまるでイタチごっこの様相を呈しており、金融庁がどれほど高度な分析ツールを導入したとしても、不正を働く人間の創意工夫によって、いつか見破られる「隙」は生まれてしまうかもしれない。
さらに、今回の対策がどこまで実効性を持ちうるのかも注視する必要がある。新たな手法が導入されたとしても、それを実際に運用する現場の体制や、専門人材の育成が伴わなければ、絵に描いた餅に終わる危険性もある。金融庁の内部における、これらの体制整備が同時に進められているのか、その点も今後の報道に注目したい。
経済紙として、我々は金融庁の取り組みを応援する。しかし同時に、企業側のコンプライアンス意識の向上、そして監査法人の独立性と実効性のある監査体制の確立も、車の両輪として不可欠であることを強調しておきたい。今回の「粉飾対策」が、単なる表面的な強化に終わることなく、日本の資本市場全体の健全性を高める契機となることを強く期待する。そして、その過程で、我々メディアも引き続き、不正の監視と情報発信の役割を果たしていく所存である。
金融機関の不正を未然に防ぐ！金融庁が「粉飾等予兆管理態勢高度化に向けたモニタリングレポート」を公表,金融庁
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