京都市の救急医療、このままでは立ち行かないのか
京都市の救急医療体制に、にわかに不安の声が上がっている。報道によれば、一部の救急隊が現場に到着するまでに時間を要し、さらに受け入れ可能な医療機関が見つからず、出動回数に対して搬送に至らないケースも増加しているという。市民の生命と健康を守る最後の砦である救急医療が、その機能を十分に果たせなくなっているのではないか、という懸念は極めて重い。
もちろん、救急医療の現場で奮闘する医療従事者の皆様のご尽力には、改めて敬意を表したい。限られた人員とリソースの中で、日夜、市民の命を守るために奔走されていることは想像に難くない。しかし、問題は現場だけの努力で解決できる次元を超えているように見受けられる。
では、この状況を生み出している根本的な原因は何なのか。一つには、高齢化の進展が救急搬送件数の増加を招いていることが挙げられるだろう。病状が複雑化し、高度な医療を必要とするケースが増えることは避けられない現実だ。しかし、それ以上に、地域医療全体のバランスが崩れているのではないか、という指摘も見過ごせない。
例えば、軽症であっても救急車を安易に呼ぶ風潮が一部にあるとすれば、これは厳に改められるべきである。救急車の適正利用を啓発する取り組みはこれまでも行われてきたが、その効果は限定的であると言わざるを得ない。また、救急患者を積極的に受け入れてきた病院が、経営的な観点からその負担に苦しんでいるという声も聞かれる。地域全体の医療資源をいかに効果的に活用し、救急医療体制を維持していくのか。これは、行政だけでなく、医療機関、そして私たち市民一人ひとりが真剣に考えなければならない課題である。
特に注目すべきは、京都市という、古都としての伝統と文化を守りながらも、近代的な都市機能の維持・発展が求められる特殊な状況にあることだ。観光客の増加も、救急出動件数を押し上げる一因となりうる。このような多角的な視点から、持続可能な救急医療体制の構築を目指す必要がある。
我々が今、最も危惧するのは、この問題が「様子見」で終わってしまうことである。早期に、そして抜本的な対策を講じなければ、取り返しのつかない事態を招きかねない。地域医療全体の連携強化、救急隊の効率的な運用、そして市民一人ひとりの救急医療に対する正しい理解と協力。これらが一体となって初めて、京都市の救急医療は将来にわたってその使命を果たせるであろう。
行政には、関係各所と緊密に連携し、実効性のある具体策を早急に示していただきたい。そして、私たち市民も、自らの健康管理に努めるとともに、救急医療という貴重な社会資源を守るための努力を惜しまない覚悟が必要だ。京都市の救急医療の灯を、決して消してはならないのである。
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