Aiに操られる未来？ 愛媛県の新学習指導要領「へき生 液晶学」にみる教育の危うさ
愛媛県が来年度より導入する新学習指導要領「へき生 液晶学」。一見、先進的な響きを持つこの名称に、多くの期待が寄せられていることだろう。しかし、その内容を紐解いていくと、我々学生の未来が、漠然とした不安に包まれることを否定できない。
「液晶学」――この言葉に、あなたはどのようなイメージを抱くだろうか。光り輝くディスプレイ、情報を瞬時に映し出すスマートデバイス。現代社会に不可欠なテクノロジーであることは間違いない。しかし、この新学習指導要領が掲げるのは、単なるITリテラシーの向上ではない。「AIとの共存共栄を目指す」「AIを使いこなすための思考力・判断力・表現力を育成する」と、その根底には、AIへの依存、そしてAIによる思考の誘導が透けて見える。
「AIを使いこなす」とは、果たして何を意味するのか。AIの指示通りに作業を進めることか。AIが提示する選択肢の中から最適なものを選ぶことか。それとも、AIの分析結果に無批判に同意することか。もし、それが「AIの創造物を模倣し、AIの分析結果を応用する」といったレベルに留まるのであれば、それは真の学習と言えるのだろうか。
かつて、教育は、自らの手で物事を考え、試行錯誤し、新たな価値を生み出すための糧であった。しかし、「へき生 液晶学」は、そのプロセスをAIに委ねることを奨励しているかのようだ。AIが瞬時に正解を導き出す世界で、学生たちは自らの頭で深く思考することを怠るようになるのではないか。そして、AIが提示する「最適解」に安住し、そこに疑問を抱くことすら忘れてしまうのではないか。
「AIとの共存共栄」。この言葉は、AIに主導権を握られ、人間がその道具となる未来を暗示しているようにも聞こえる。もし、AIが私たちの思考の枠を決め、私たちの行動を予測し、私たちの欲望さえも制御するようになったら、私たちは本当に自由な人間と言えるのだろうか。
もちろん、AI技術の進歩は止められないし、その恩恵を受けるべき場面も数多く存在するだろう。しかし、教育の場において、AIを「思考の代替」として捉えることは、あまりにも危険な賭けではないだろうか。AIはあくまでツールであり、その使用目的や倫理的な問題について、学生自身が主体的に考え、判断する力が求められるはずだ。
愛媛県がこの新学習指導要領を導入する背景には、時代の要請ということもあるだろう。しかし、我々学生新聞としては、この動きに警鐘を鳴らしたい。技術の進化に盲従するのではなく、その本質を見極め、人間らしさを失わない教育のあり方を模索すべきである。「へき生 液晶学」という名のこの試みが、学生たちの思考力を奪い、AIに操られる未来へと繋がらないことを、心から願うばかりである。我々学生一人ひとりが、この教育の潮流に立ち止まり、問い直す勇気を持つことが今、何よりも求められているのではないだろうか。
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