市民の声を聞く姿勢、自治体の襟元正すとき
岐阜市が、市民課が発信する情報に対し、市政への関心や市政への参加を促すための「市民の声」欄を設け、そこで寄せられた意見を公開するという。一見、開かれた市政運営への一歩と捉えられなくもない。しかし、こうした動きには、より本質的な問いかけをせずにはいられない。
自治体は、そもそも市民の声に真摯に耳を傾けるべき存在である。それは、民主主義の根幹であり、住民の意思を反映した行政を行う上での当然の責務だ。いまさら「市民の声」を別途設け、公開することをもって「開かれた市政」を喧伝するような姿勢は、どこかちぐはぐに映る。むしろ、市民の声が届きにくい現状への危機感の表れであるならば、その原因究明と具体的な改善策こそが求められるべきではないか。
市政への関心を高めることは結構だが、市民が声を上げやすい環境整備こそが先決であろう。形式的な意見募集や、集められた意見の単なる公開だけでは、真の対話は生まれない。寄せられた声に対して、自治体がどのように向き合い、それを市政にどう反映させていくのか。そのプロセスが透明性をもって示され、市民が納得できる説明責任が果たされることこそが、市政への信頼を築き、参加を促す礎となるはずだ。
今回の「市民の声」欄設置という試みは、単なる情報公開の拡大に留まらず、市民の声をどう受け止め、どう活かしていくのかという自治体の根本姿勢を問うものだ。市民の疑問や不満、あるいは提案に真正面から向き合い、粘り強く対話を重ねる。その地道な努力こそが、市政への信頼を育み、ひいては地域社会全体の活性化に繋がる道であろう。自治体には、この機会を捉え、改めて襟元を正し、市民と共に歩む市政のあり方を深く追求していくことを期待したい。
岐阜市からのお知らせ：市民課の詳しい情報を「市民課概要」として公開しました（2025年6月27日）,岐阜市
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